「身体とこころは一つ」 被災地での看護師の役割とは
被災地での看護とは
「災害看護」という考えが生まれたきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災です。自然災害によって突然日常を奪われ、心身ともに傷を負う被災者は珍しくありません。彼らの生活や健康を支えつつ、長期にわたり継続してみることができるのは看護職です。例えば仮設住宅に入居した人たちの血圧を測りながら、悩み事を聞くなど話し相手になり、誰でも参加できるお茶会やレクリエーション、集会所での健康チェック、講話、歌や体操などを行う健康教室を企画します。そうして、健康管理とストレスの発散を促します。めざすのは、その人が本来持っていた生きる力を、もう一度引き出すことです。
被災地で生かす看護師の4つの視点
仮設住宅では、それまで当たり前だった生活が一変します。そこに長期的に、被災者を支える看護師が入って住民との関係を築き、短期では見落としがちな彼らの心身の変化に気づけ、ニーズに合った支援ができます。
看護師は、相手の健康と生活を支えるスキルを備えています。それは人間、環境、健康、看護の4つの視点で総合的に相手をみて、動くことが仕事だからです。たとえ毎日でなくても定期的に見守り支援し、「困った時の拠りどころ」という役割が災害看護に求められるものです。
当たり前が当たり前にできる大切さ
災害看護は、患者とのコミュニケーションや人の健康と生活をみるといった、看護の基礎を扱う領域です。例えば、病院で手術後の患者に食べたり、立ち上がったり、歩いてトイレに行くなど、日常の感覚を取り戻す訓練を重ねると、みるみる回復します。我慢や不快なことの多い被災地の住民も同様です。ぐっすり眠ったり、ゆっくり湯船に浸かったり、どこかへ遊びに出かけたりなど、被災前であれば当たり前にできた日常の感覚を取り戻し、意識的にやってもらうよう導きます。体がほぐれれば心もほぐれます。そうすることで、被災者には次のステップに進む力が生まれます。被災者の心身両面に、意図的にアプローチできるのが被災地で活動する看護師なのです。
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先生情報 / 大学情報
宮城大学 看護学群 看護学類 講師 勝沼 志保里 先生
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