世界に広がる「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の概念
新生児死亡率は低いけれど
助産学は命が誕生する際のサポートをし、そしてその後の幸せを見据えた健康支援を、母子、そして家族を対象に考える分野です。例えば新生児死亡率の低い日本ですが、残念ながら生まれてくる命のすべてが必ずしも健康に幸せに育つ環境ではなくなってきています。そこには、昨今社会問題となっている幼児虐待、あるいはドメスティック・バイオレンス(DV)、さらには社会的貧困や性犯罪など、さまざまな要因があります。看護学の視点からそういった部分に目を向けて種々の問題に対して支援をめざす考え方のひとつに、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」があります。
性と生殖に関する健康と権利とは
リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、日本語では「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。日本では1960年代からそういった概念が少しずつ定着しはじめましたが、1994年の国連で国際的承認を得たことがひとつのブレイクスルー(現状打破のきっかけ)となり、世界的に定義され、確立へ向けての大きなうねりとなりました。
この考え方は基本的に女性が身体的、社会的、精神的に健康を維持しながら、出産の選択、つまり産むか産まないか、あるいはいつ、何人、どんな間隔で産むか、などを自ら選択し決断する権利のことを指します。
進むリプロダクティブ・ヘルス/ライツの確立
また、一方ではどんな女性でも子どもを産み、育てていく可能性があるということもこの概念のひとつです。性に関する知識が不十分で性感染症にかかったり、そこからの不妊、望まぬ出産、またHIV(エイズを引き起こすウイルス)感染も世界的に大きな問題として考えられています。
単に女性であるということによって虐げられる、社会的な立場が弱くなる、などといった多くの問題について、看護学的視点でとらえながら、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの確立に向けた研究、活動は続いています。
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先生情報 / 大学情報
岩手県立大学 看護学部 看護学科 教授 福島 裕子 先生
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