講義No.14822 看護学

妊娠・出産だけじゃない 生涯の健康生活を支える母性看護

妊娠・出産だけじゃない 生涯の健康生活を支える母性看護

お産を楽にし、元気な赤ちゃんを産むために

母性看護では、病気に対するケアだけではなく、「健康な人が健康に生活するためのケア」の視点も求められます。妊娠や出産に向けて女性の体は変化しますが、病気の状態ではないからです。また、妊娠期の健康管理や体を整えていくことは、お産自体を楽にし、胎児や新生児を健康にするといった意味でも非常に重要です。妊婦は、胎児の健康状態は気にしても、自身は体重の増えすぎや痩せすぎのままという場合も多いため、出産に向けた体を意識した食事や運動など、日常生活に関しても支援していく必要があります。

若い世代の不調にも注目

「産後うつ」の原因にもなると考えられている貧血に着目した支援では、「サプリメントやこんな食材で鉄分を取りましょう」と伝えるだけでは続かず、効果は上がりません。妊婦の心や体の変化を理解しながら、習慣として無理なく栄養摂取できる方法やアイデアを考えていく必要があります。同時に妊娠期以前のもっと若いうちから貧血などを改善しておくための取り組みも大切です。若い世代は、貧血に限らず、痩せすぎ、倦怠(けんたい)感、生理不順など、正しい知識や理解がないまま不調を放置していることも少なくありません。将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが自分たちの健康に向き合うという「プレコンセプションケア」は、近年、日本においても取り組みが進んでいます。

「次世代の健康」にもつながる

プレコンセプションケアは、「妊娠前のケア」だけではありません。男女ともに人生をどう生きていくか、主体的な選択をしていくためにも「自分の健康を保つ」という意識が大切です。そのため、例えば大学での啓発を実践的に行うなど、今後ますます若い世代に向けた取り組みの充実が求められます。
このように母性看護は、出産期前後の女性や新生児、支える家族だけでなく、女性のライフサイクル全般にわたる看護やケアも研究対象としており、次世代の健康にもつながっていく学問だといえるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

創価大学 看護学部 看護学科 講師 宝田 慶子 先生

創価大学看護学部 看護学科 講師宝田 慶子 先生

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母性看護学、助産学

先生が目指すSDGs

メッセージ

看護師は、あらゆる状態にある対象者にケアを行う大変な仕事です。だからこそ、「なぜこの仕事を選ぶのか」や「何を実現したいのか」を自覚しておくことが大切です。今は明確でなくても、大学で学ぶ中で「看護とは何か」と考え、思いを膨らませて、自分なりの「看護師像」や「看護観」を深める時間にしてください。また看護の道は1つではありません。保健師や助産師、養護教諭、病院だけでなく企業やメディアなどいろいろな場所で活躍する可能性が広がっていますので、希望を持って学んで欲しいです。

創価大学に関心を持ったあなたは

創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、69カ国・地域、260大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。