講義No.10456 看護学

がん患者の「目に見えない副作用」をケアし、QOLの向上をめざす

がん患者の「目に見えない副作用」をケアし、QOLの向上をめざす

「目に見えない副作用」とは

がん治療の一つに、抗がん剤を投与する化学療法があります。よく知られる副作用に、髪の毛が抜ける、強い吐き気といった症状があります。しかし、抗がん剤の副作用には、目に見えないもの、検査をしないとわからないものも少なくありません。その一つに白血球の減少があります。白血球は、外部から侵入した細菌やウイルスと闘い、体を守る防御機能をつかさどっています。そのため、白血球が減少すると、風邪をひきやすくなったり、その他の感染症にかかりやすくなったりするのです。

症状が出る前の予防が重要

化学療法の治療中に感染症にかかってしまうと、感染症に苦しむだけでなく、がん治療を中断せざるを得なくなります。治療が遅れ、社会復帰が遅くなり、そのことで精神的なダメージを受けるなど、患者さんの生活の質(QOL)が大きく下がってしまいます。そのため、症状が出る前に予防をすることが大切なのですが、今まで行ってきた習慣を変え、新しい行動を獲得することは、とても難しいことです。例えば、感染症予防に有効な行為に歯磨きがあります。毎食後と寝る前の歯磨きが求められるのですが、もともと1日1回しか歯磨きをしていない人は、毎食後の歯磨きはなかなか定着しません。そこで、それぞれの生活スタイルや価値観を尊重し、毎食後の歯磨き習慣へと患者さんを導くことが、がん看護として重要です。

多様で複雑になる副作用へのケア

今や2人に1人が、がんになる時代といわれています。入院せずに化学療法を受けながら、社会生活を続ける人も少なくありません。また、医学の進歩によって、新しい抗がん剤が次々と生まれ、がん治療はますます高度に、複雑になっています。当然、副作用やその現れ方も、人によってさまざまです。
そうした副作用を、少しでも回避し、和らげることが、患者さんの苦痛の軽減につながり、早い治癒や社会復帰につながります。それを実現することが、現在のがん看護の重要な課題なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

岩手県立大学 看護学部 看護学科 准教授 細川 舞 先生

岩手県立大学 看護学部 看護学科 准教授 細川 舞 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

「看護」とは、何が正しい答えなのかがわからないことが多い分野です。Aさんに対しては正解でも、Bさんに対しては不正解であることがよくあります。その違いの背景には、患者さんそれぞれの人生や価値観の違いなどがあります。こうした人間の多様性を理解し、受け入れられることが、看護を学ぶうえでとても大切です。
「自分はそうは思わないけれど、この人はそう思うのだな」という寛容さ、柔軟さを、ぜひ高校時代に養ってください。本を読んだり、映画を見たりして、登場人物の気持ちを想像し、理解する力をつけましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

岩手県立大学に関心を持ったあなたは

大学は「知識」を得る場であるだけではなく、「人生の目的」を考える場であり、これからの人生で自分は何をなすべきかを探求する場でもあります。人はそれぞれ固有の素質と能力を持っています。それをいかに見出し、育成していくかが教育の最大課題であると考えています。この大学での貴重な学習期間に、自己の能力と個性を伸ばし、適性を見出すことに努めてください。本学の教職員は、全力を挙げてこれに協力します。