がん患者の「目に見えない副作用」をケアし、QOLの向上をめざす
「目に見えない副作用」とは
がん治療の一つに、抗がん剤を投与する化学療法があります。よく知られる副作用に、髪の毛が抜ける、強い吐き気といった症状があります。しかし、抗がん剤の副作用には、目に見えないもの、検査をしないとわからないものも少なくありません。その一つに白血球の減少があります。白血球は、外部から侵入した細菌やウイルスと闘い、体を守る防御機能をつかさどっています。そのため、白血球が減少すると、風邪をひきやすくなったり、その他の感染症にかかりやすくなったりするのです。
症状が出る前の予防が重要
化学療法の治療中に感染症にかかってしまうと、感染症に苦しむだけでなく、がん治療を中断せざるを得なくなります。治療が遅れ、社会復帰が遅くなり、そのことで精神的なダメージを受けるなど、患者さんの生活の質(QOL)が大きく下がってしまいます。そのため、症状が出る前に予防をすることが大切なのですが、今まで行ってきた習慣を変え、新しい行動を獲得することは、とても難しいことです。例えば、感染症予防に有効な行為に歯磨きがあります。毎食後と寝る前の歯磨きが求められるのですが、もともと1日1回しか歯磨きをしていない人は、毎食後の歯磨きはなかなか定着しません。そこで、それぞれの生活スタイルや価値観を尊重し、毎食後の歯磨き習慣へと患者さんを導くことが、がん看護として重要です。
多様で複雑になる副作用へのケア
今や2人に1人が、がんになる時代といわれています。入院せずに化学療法を受けながら、社会生活を続ける人も少なくありません。また、医学の進歩によって、新しい抗がん剤が次々と生まれ、がん治療はますます高度に、複雑になっています。当然、副作用やその現れ方も、人によってさまざまです。
そうした副作用を、少しでも回避し、和らげることが、患者さんの苦痛の軽減につながり、早い治癒や社会復帰につながります。それを実現することが、現在のがん看護の重要な課題なのです。
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岩手県立大学 看護学部 看護学科 准教授 細川 舞 先生
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