紙の資料を読みやすく変換! 視覚障害のある人の学習を支える
メディア変換で学習をサポート
視覚に障害がある学生には、紙の教科書を読むことが難しい人もいます。教科書の内容を把握するためには、点字に訳したり文字を拡大したりといった準備が必要です。現代は紙の資料を電子化するOCR(光学的文字認識)という技術のおかげで、視覚に障害があっても使いやすい電子書籍を作ることが可能になりました。ただし紙を別のメディアに変換するには長い時間が必要なので、より早く正確に変換をする方法が研究されています。
数式の変換は難しい
多くの本はOCRだけでも変換できますが、数式に関しては課題があります。数式には複雑な構造が多く、例えば分数のように上下に文字が配置されるものがあります。すると変換がうまくいかず、レイアウトが崩れたり、正しく認識できなかったりするのです。こうした問題を解決するために、数式の構造解析やパターンマッチングが行われるようになりました。OCRで読み込んだ文書は、ドットの集合で構成される画像に変換されます。「この部分が黒い文字はA」などのデータを集めれば、パターンマッチングで文字の種類を判断可能です。さらに数式の構造を細かく分析し、分数線の上下にどのような文字があるのか、どこまでがひとかたまりの数式なのかなど、最も可能性の高い候補を導き出します。こうした分析結果をスキャンした文書に反映させることで、従来よりも数式のメディア変換の精度が上がるのです。
変換をよりスムーズにするために
研究の進展により、メディア変換にかかる期間が大幅に削減されました。例えば変換に1カ月かかっていたような本も、数週間で電子書籍や点字にできます。ただしメディア変換に欠かせないOCRには認識ミスもあるので、人の手による修正が必要です。少しでも人の負担を軽減しながら早く正確に変換するために、AIやディープラーニングの研究も行われています。OCRが認識ミスをしやすい箇所を覚えさせ、自動で修正できるようにするのです。
参考資料
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筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 准教授 金堀 利洋 先生
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