魚にとってのストレスとは? バイオセンサで魚の気持ちを探る
バイオセンサでストレスを測定
「バイオセンサ」とは、生物の機能を利用して目的の物質を迅速かつ簡単に測ることができるシステムです。これを使うことで、今まで測定困難だったものを測れるようになりました。例えば生体内にはブドウ糖(グルコース)を酸化する酵素があります。ここで、酸化に使う酸素とグルコースとの量の比率は1対1なので、酸素の量がわかれば間接的にグルコースの量もわかります。この仕組みを利用したバイオセンサを使えば、ストレスの指標となる血中グルコース濃度を測定することが可能になるわけです。
世界初! 魚のストレスをリアルタイム測定
ストレスが原因で魚が死んでしまう事例は多くありますが、事前にストレスを知ることは非常に困難でした。血中のグルコース濃度を測定するには、魚を水から出して採血する必要があり、それ自体がストレスになる可能性があるからです。そこで、魚にバイオセンサを取り付けて、泳がせながらストレスをリアルタイムに測定できるシステムを、世界ではじめて開発しました。これを使うことによって、魚は水中の酸素濃度が低い時、血中のグルコース濃度が高くなり、ストレスを受けていることがわかるようになりました。
ストレスの原因を探る
縄張り意識の強いティラピアという魚を使ったストレス検証の実験もあります。まずティラピアAのいる水槽に同サイズのティラピアBを入れ、その後Bを取り出します。次にAよりも体格の大きなティラピアCを入れてストレスを比較しました。AとBが一緒にいるときは瞬間的にストレスが上がりますが、だんだんと平常値に戻ります。Bが退場するとAのストレスはさらに下がりました。しかしCを入れた場合、BといるときよりもAのストレスが非常に高くなりました。これはCがAを追い回していたからだと考えられます。後日、透明な板で仕切った水槽にAとCを入れても、Aのストレスは上昇していました。これは物理的な接触以外にも視覚などから受けるストレスの可能性があります。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 教授 遠藤 英明 先生
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