おいしさと安全の秘密は微生物のコントロール

おいしさと安全の秘密は微生物のコントロール

食品には微生物や菌、ウイルスが存在する

私たちが食べている食品には、有害な微生物や菌、ときにはウイルスが含まれています。例えば、海で育つ牡蠣(かき)は海へ流れ込んだノロウイルスを蓄積することがあり、それを食した人に感染することもあります。感染を防ぐために水揚げした牡蠣を浄化する手法もありますが、完全ではありません。生食できるよう、薬品を使わない安全な方法でノロウイルスを除去できないか試行錯誤した結果、高圧力をかけることでノロウイルスが不活化することがわかりました。また、ノロウイルスは強い感染力を持っているため、食材を扱う調理場を安全な場所にする必要があります。これには、卵から抽出した成分を用いたノロウイルス除去に有効な不活化剤が開発され、現場で活用されています。

おいしく安全な食材か検査する

食品を安全にするためにすべて殺菌すると、おいしさが損なわれてしまいます。おいしく安全な食品を作るには、食品を傷める原因となる微生物の混入を防いだり、コントロールしたりする必要があるのです。食品の微生物やウイルスの検知にはPCR法を用います。PCR法は新型コロナウイルスの感染確認用として広く認知されましたが、本来はさまざまな用途に使われている検査法です。特定のDNAを増幅させ、食品や生物のなかに目的の微生物などの遺伝子配列が存在しているかを短時間で確認できます。実際には、漁場や食品加工会社の生産ラインなどでも衛生管理の一つとして使われています。

食品ロスの軽減、海外輸出にも貢献

菌やウイルスの混入や増殖をうまくコントロールすると長期保存が可能になり、食品ロスを減らすと同時に、日本の食材の海外輸出への可能性も広がります。また、養殖業者や食品会社と安全でおいしい食品を共同研究・開発することで、消費者が求める食品を供給できます。安全に、おいしい食品にする技術・手法を追究することが、社会貢献につながるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 教授 高橋 肇 先生

東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 教授 高橋 肇 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

食品微生物学、食品衛生学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私たちが食べているものは、誰がどこでどのように作っているのでしょうか。コンビニの唐揚げや、ファストフード店のフライドポテトの販売が、海外からの輸入遅延により一時的に制限されたことがあります。そもそも、なぜそれらの商品に日本の食材が使われていなかったのはなぜでしょう。また、カット野菜や刺身などの生食する食品の多くは日持ちしませんが、コンビニのお弁当は冷蔵せずに2日はもつように作られています。それらにはきちんと理由があるのです。ぜひ、身近な食品の「なぜ」を探してみてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。