患者だけじゃない! 患者の家族にも快適な病院づくり
入院に付き添う家族の環境とは?
家族が長期入院した時、付き添う方のための空間は十分考えられているとはいえない状況があります。例えば小児科入院の場合、病室内にある低いコーヒーテーブルで毎食腰をかがめて食事をし、入浴は病室から離れた施設で短時間にすませ、夜間は柵のついた狭いベッドで子どもと一緒に寝る、といったことが起こり得ます。ただでさえ子どもが心配で心身ともに疲弊しているのに、食事・睡眠・入浴という人間の基本的な生活行動に制約を受けるために、そのストレスの大きさは計り知れません。もし、病室内が明るい色彩で飾られ、通常のテーブルやソファベッド、シャワーやトイレがあれば、もっとくつろいで過ごせるでしょう。
映画やアートを楽しむ病院
病院の空間づくりで、先進的な取り組みをする事例がイギリスにあります。ベッドに寝たまま観賞できる映画館やダンスルーム、礼拝室、庭園など患者やその家族、スタッフなど院内の人々の心をほぐす仕掛けがあります。院内には芸術作品がそこここに展示され、各作品に解説がつけられるなど、病院のなかにいることを忘れそうになります。日常と変わらない空間や芸術にふれることで、患者さんと家族と働く人たちへのポジティブな効果があると考えられています。「病気だから映画やダンスを楽しんでいる場合ではない」という考え方ではなく、病気だからこそ生活の質を高めていくことが大切です。
患者さんも家族も居心地よくする工夫
人間は、知らず知らずのうちに五感をフルに活動させて生活しています。たとえ大がかりなリフォームやインテリアの変更をしなくても、小さな子の目の高さに動物を描いたり、看板の文字をかわいくしたり、壁を鮮やかな色にするなど、手の届く範囲を改善・工夫することで、病院はもっと居心地のよい場所になるでしょう。医療界には患者さんだけではなく、家族も一緒に考えるとする「ファミリー・センタード・ケア」という概念があります。患者さんとその家族が快適に過ごせる居場所づくりが病院内にも求められています。
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先生情報 / 大学情報
椙山女学園大学 生活科学部 生活環境デザイン学科 准教授 阿部 順子 先生
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