スクラップアンドビルドではなく、建物は壊さず生かす時代!

スクラップアンドビルドではなく、建物は壊さず生かす時代!

古い建物・住宅は余っている

日本の高度成長期、経済の発展や人口の増加によって、あちらこちらに鉄筋コンクリートづくりの建物が建てられました。半世紀を経た現在、解体され新たにビルなどが造られたところもありますが、当時の建物はたくさん残っています。空き家が問題になっているように、現在の日本では世帯数より住戸数の方が多いため、古い建物は使われずに余ってしまっているのです。今後も少子高齢化が進み、その傾向は顕著になるでしょう。

流行する「リノベーション」

使える建物も壊して新しいものを造る「スクラップアンドビルド」の時代ではなくなり、「今あるものをどう活用するか」という考え方が主流になってきています。
長屋や町屋を改修工事し、宿泊施設やショップ、モダンな住まいとして生まれ変わったケースがよく見受けられます。木造の古い建物は、リノベーションが普及するまでデザイン面で陳腐なイメージを持たれていました。しかし、柱や梁に大きな丸太を使用しているなど、実はとても贅沢なつくりになっています。このような「隠れた価値」を大幅な改装によって活用することで人が集まり、街の活性化にもつながります。

新たに生まれ変わるコンクリート

リノベーションを行う際には、建物の状態を詳しく評価し、そのまま使えるかどうかを判断する必要があります。コンクリートは一見頑丈に見えますが、ゆっくりと時間をかけて水分が蒸発し、ひび割れが起こりやすくなっていきます。内部に亀裂が入ることもあり、慎重に検査しなければなりません。その結果を受けて、劣化の度合いや耐震性、デザイン性も含めて、どのような補強が必要かを考えます。コンクリートの寿命はおよそ100年と言われており、高度成長期に建てられたものは補強すればまだ使えるはずです。メンテナンス事業に力を入れる住宅メーカーも増えつつあり、今後は「100年」という枠の中で安全・安心な、より良い住まいを追求していくことになるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 生活科学部 居住環境学科 教授 渡部 嗣道 先生

大阪公立大学 生活科学部 居住環境学科 教授 渡部 嗣道 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築工学、建築材料学

メッセージ

私は「豊かな住まいづくり」に関する研究を行っています。特に、安全・安心で長持ちする住まいとはどんなものか、どれくらいの強度があるのかを専門にしています。
あなたは、建物に使用されているコンクリートの寿命がどれくらいか知っていますか? コンクリートは約100年もつと言われています。空き家問題が社会問題となる中で、余った建物をどのように有効活用していくかも重要になるでしょう。私と一緒に「豊かな住まいづくり」について研究してみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。