照明は明るいだけじゃ物足りない 心にも影響する光の効果
心に影響を与える調光技術
「光の色が変わると体感温度も変わる」という実験結果があります。快適な冷房温度を調べたところ、温かみのある電球色の部屋より白い光の部屋の方が、体感温度が低くなり省エネになるとわかったのです。また、ろうそくの灯りを見るだけで癒やし効果があるなど、私たちは目に見える光に精神的影響を受けることがわかります。新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり需要」で、自宅でアロマキャンドルを焚(た)く人も増えました。
ろうそくの特徴的な光
近年、LEDでろうそくを再現したLEDキャンドルが市販されています。しかし、そのゆらぎ方などはまだ本物にはほど遠いと言わざるを得ません。日本伝統のろうそくは、西洋のろうそくと異なる燃え方をします。芯や蝋(ろう)の材料などの違い、またその太さの違いなどで、独特な色とゆらぎ方をするためです。もし本物そっくりに再現できるなら、ろうそくを使う日本の伝統行事にLEDを活用する可能性が広がります。そうなれば、神社仏閣などで火災が起きたり、見物客が火傷したりといったリスクがなくなります。
アナログな現象を再現してみよう
ろうそくの火のゆらぎは、デジタル的な割り切り方ができない連続するアナログ信号ととらえることができます。「ゆらめき」という自然現象を人工的に再現する一案として、LEDを単純に点滅制御するのではなく、プロジェクションマッピングと同じ考え方で、光を水蒸気に当てる方法が考えられています。ただし水蒸気を生むには熱源が必要です。そこで水蒸気に似た状態として、超音波振動による加湿器から噴霧してLEDの光を当てれば三次元的に火を表現できます。また光の照射角度や噴霧器の開口部などを工夫すれば、より本物に近づけることができるでしょう。そうした課題をクリアすれば、自然な火に見える照明で人の心に癒やしを与える、新しい照明器具が誕生するはずです。
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神奈川工科大学 工学部 電気電子情報工学科 教授 三栖 貴行 先生
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