省スペースが生み出す都市文化
40cmに秘められた可能性
日本の駅で当たり前のように見かけるコインロッカー。しかし、外国では鍵が壊され盗難の被害に遭うため、ほとんど見かけません。このロッカーは40cm角。40cm角を1日借りると400円、1時間で約17円、4分で1円です。この値段で駅中のスペースを借りられることは通常あり得ないことです。例えばこのロッカーを5つ横に並べれば、大人が中で寝ることができます。費用はカプセルホテルの2分の1程度です。あるいは縦に5つ並べてシャワールームにすれば、お湯などの代金を含んでも、10分で30円程度です。経済的な見方をするだけでロッカーがいかに“優れもの”であるかということがわかります。また、40cmという大きさは人間の体に一番フィットする大きさで、イスの座面なども40cmです。ロッカーを人が利用できる場所にすれば、とても安い“居場所”になります。ロッカーを基準にすれば、人間が省スペースでできることは何かを考えることもできるようになるのです。
マンガ喫茶~省スペースで最大限の生活~
建築学と一般的に言われている大学の研究の世界では、マンガ喫茶は全く学術的価値のないものとされてきました。しかし、私は現在の24時間型のマンガ喫茶が盛況である背景には、今の建築や都市事情を解明する建築学的な要素があるのではと思い、実際にマンガ喫茶で生活しながら研究を始めました。その空間は多様で、ひとり1畳の適度な広さのブースや、限りなく人のスケールに即した細い通路にひしめく合理的なブース、音と視界を遮断した「書棚パーティション」、和服の女性店員が数寄屋ブースでオーダーに応じる店など、壁やインテリアを見るだけでも、高密度のコックピットにいるようでした。マンガ喫茶は、現代の都市生活において個々の私的活動を支えるだけでなく、地域によっては、近隣の商店との互助関係を成立させ、積極的に街を活性化させる重要な拠点となっている場合もあるのです。
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先生情報 / 大学情報
名古屋工業大学 工学部 社会工学科 建築・デザイン分野 教授 北川 啓介 先生
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