都市から社会を「発見」する~失われた「界隈性」とは?
どこも同じような街に
日本中の街や都市が、どこも同じような風景、表情になってきていると感じたことはありませんか。大手チェーンのスーパーマーケットやカフェ、ファストファッション店などばかりで、ぱっと見ただけでは、そこがどこの街なのかすぐにはわかりません。これは都市や街が均質化し、街の個性が失われてきていることと関係があると考えられます。
例えば、オリンピックなどの巨大プロジェクトに関連して、再開発が行われると、街にそれまであった「人と人とのつながりから生み出される賑わい」が失われてしまうことがあります。
開発で失われる小さな公共の空間
かつてジェイン・ジェイコブズという人が、1960年代のアメリカの都市について、近代的な都市計画によって大きな道路をつくるなど整然とした都市空間が作り出された結果、それまで路地や裏町のような小さな空間で生み出されていた人々のつながりが失われたと指摘しました。都市には人と人とが触れあい、助け合う小さな公共の空間、つまり「界隈(かいわい)」が必要であると提言しています。
ジェイコブスの提言から約半世紀を経ても、結局、世界中の都市はどんどん合理的・機能的に整備されてきました。しかし、その結果、マイノリティや貧困層の人々が追い出されて、かつてあったような、いろいろな職業や年齢、階層など、多様性のある他者と出会う機会が失われてしまったとも言えます。
都市の課題や問題を社会の中から見つける
都市で起きている問題はその社会の状況を反映しています。界隈性の消失は近年の社会の分極化とも関連しているといえるでしょう。都市問題は他にもさまざまなものがあり、その現れ方はそれぞれの国や地域によって違ってきます。例えば地方都市は人口の流出に伴い、さまざまな歪みが表面化しています。
「社会学」「都市科学」は、社会や都市の抱えるさまざまな問題や課題を具体的な社会の中から見つけ、それを解決することを大きな目的とする学問です。
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先生情報 / 大学情報
横浜国立大学 都市科学部 都市社会共生学科 准教授 三浦 倫平 先生
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