国民の幸福度が高い、フィリピンのヒミツ
高いフィリピンの幸福度
アメリカの調査会社Gallup Internationalが行っている調査などで、フィリピンが幸福度ランキングで上位になることが多くあります。近年は経済成長率が上昇していますが、フィリピンは現在も開発途上国であり、日本もODA(政府開発援助)でさまざまな協力をしています。経済的に豊かとはいえない状況下で、なぜフィリピンの人々の幸福度は高いのでしょうか?
植民地時代に培われた国民性
フィリピンは、400年以上にわたって、他国の植民地となっていた経験があります。16世紀にスペイン領、1898年にアメリカ領となり、先進国によって国の基盤が作られてきましたが、それらは市民の実情に合わないものでした。その結果、人々は建前として国のルールは守りつつも、本音の部分では「自分たちで何とかしていこう」と思い行動するようになったのです。このような性質を現地では「ディスカルテ」といいます。「常識を少し超えながら自分たちで前に進んでいこう」という柔軟でポジティブな国民性は、フィリピンの歴史的背景のもとで形成されたのです。
カトリック教会のネットワーク
多民族・多言語という状況下にもかかわらず、ディスカルテな人々は、積極的に人間関係を構築することに長けています。そのつなぎの役割を果たしたのが、アメリカ時代から習得するようになった英語、そしてスペイン領時代に普及したカトリック教会です。海外へ出、世界中のカトリック教会のネットワークを生かす人も多く、フィリピンはいち早くグローバル化しました。人々はネットワークを大切にしているのです。ポジティブな国民性に加え、このように人と結びつき、孤独を感じにくいことが、幸福感につながっていると考えられます。
現在の日本では終身雇用制が崩壊しつつあり、海外に出る人も増加し、グローバル化が進んでいます。日本も組織社会のしがらみを破り、人のネットワークを発展させていくことで、幸福感がアップしていくかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 外国語学部 外国語学科 フィリピン語専攻 教授 宮脇 聡史 先生
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