案内標識(サイン)はわかりやすい? これからのデザインを考える

案内標識(サイン)はわかりやすい? これからのデザインを考える

障害者にわかりにくい案内標識(サイン)

駅や商業施設など多くの人が集まる場所に設置された案内標識(サイン)には、「ピクトグラム」と呼ばれる、情報を伝達するためのシンプルなデザインがよく使用されています。ピクトグラムは「誰にでもわかりやすいデザイン」という認識を持たれていますが、一部のものは、知的障害や自閉スペクトラム症を抱える人に意味がきちんと伝わっていないことがわかっています。例えば、案内所を表すピクトグラムは、「information」から「i」をとって丸で囲んだマークが使用されていますが、これは先述のような障害のある人にとっては抽象度が高く、正しい意味を理解できません。多くの場合、単に見たままの状態で認識するだけか、空港や新幹線など「i」のマークがあった場所とひもづけて誤認してしまいます。

理解可能なピクトグラムをどう実現する?

では、どのようなデザインであれば、障害のある人たちにも意味が伝わりやすいピクトグラムになるのでしょうか。1つの解として挙げられるのが、動きや音を表す表現をデザインに加えること、その場所を象徴する人や動作を絵で表すことです。非常ボタンを表すピクトグラムは、ボタンを指で触るデザインに3本線を加えて「動き」を出すことで、より伝わりやすいデザインへと変化しました。また、先述の案内所のピクトグラムに関しては、人を2人描き、カウンター越しに会話している様子を描くことで、より意味が伝わりやすくなったという研究結果もあります。

これからの時代に必要なデザインとは

これからのピクトグラムは、社会の平均的な層からこぼれ落ちてしまう人たちの意見や物事のとらえ方を反映させる「インクルーシブデザイン」の考え方を取り入れることが必要です。そして、環境や時代に合わせてデザインを変えていく柔軟性も持ち合わせることが大切です。「完成させて終わり」ではなく、果たしてそのデザインが最適なのかを評価し、改善・修正を加えていくというプロセスも重要なのです。

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九州大学 芸術工学部 芸術工学科 メディアデザインコース 助教 工藤 真生 先生

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