講義No.11811 地球科学

地震の原因となる活断層を発見して、災害リスクを下げる

地震の原因となる活断層を発見して、災害リスクを下げる

各地に眠る未知の活断層

プレートの動きにより、地球の大地には常に大きな力がかかっています。その力によってできたずれを「断層」と言います。中でもここ数十万年の間に動いた形跡のあるものは「活断層」と言い、それが動くことが地震の原因となります。地震の多い日本には、まだ発見されていない活断層が数多く存在しています。わかりやすい場所にあるものもあれば、隠れていて詳しく調査をしなければ発見できないものもあります。例えば、山陰地方は活断層が少ないと言われていますが、中国地方全体で見ると地震が頻繁に発生しています。つまり、この地域にはまだ確認されていない活断層が複数存在するということです。

大地震も引き起こす、隠れ断層を発見するには

2000年に発生した鳥取県西部地震はマグニチュード7.3を記録した大地震で、2016年に発生した熊本地震と同程度の規模の地震です。それだけの規模の地震にもかかわらず、鳥取県の西部に活断層があることは知られていませんでした。活断層は地表にズレが現れてはじめて確認できるようになります。過去の地表のズレは航空写真等の地形判読によって特定されますが、中には過去のズレが浸食等により見えずらくなっている場所もあります。これらの隠れた活断層を発見するためには、現地をくまなく歩き綿密な調査をする必要があります。活断層を見つけやすいポイントとして沢が挙げられます。沢は常に水で削られており、基盤となる地層や岩石が地表に表れています。この地層や岩石にズレがないかを目視で確認しながら、活断層の有無を探っていくのです。

未知の断層を発見して地震リスクを低減

日本全国に数多く存在すると考えられている未知の活断層は、日々の地道な調査によって、少しずつですが発見されています。調査ではハンマーやクリノメーターという専用の道具を使い、地層を調べます。時間がかかるうえに労力の大きい作業ですが、地震大国の日本で暮らす以上は、活断層の場所を精確に把握して、少しでも地震災害のリスクを減らす必要があるのです。

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先生情報 / 大学情報

島根大学 総合理工学部 地球科学科 准教授 向吉 秀樹 先生

島根大学 総合理工学部 地球科学科 准教授 向吉 秀樹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

地学、防災学、地震学

先生が目指すSDGs

メッセージ

地学とは、私たちが生活している地球を科学する学問です。地球の歴史や資源、地震などの自然災害まで、幅広い領域を対象にしています。地学は、地球の過去の記録を吸い出す研究でもあります。岩石や地層は、地球が持つ歴史を刻み込んだ記録媒体と言えるでしょう。
その膨大な記録の多くはいまだ眠ったままとなっています。1人の研究者が吸い出せる情報は限られていますが、過去の大地の動きなど、研究者ごとに専門分野に特化した情報の吸出しをおこなっています。日々の研究や調査は大変ですが、そこに大きなやり甲斐があります。

先生への質問

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島根大学は、学術の中心として深く真理を探究し、専門の学芸を教授研究するとともに、教育・研究・医療及び社会貢献を通じて、自然と共生する豊かな社会の発展に努めています。とりわけ、世界的視野を持って、平和な国際社会の発展と社会進歩のために奉仕する人材を養成することを使命とします。この使命を実現するため、知と文化の拠点として培った伝統と精神を重んじ、「地域に根ざし、地域社会から世界に発信する個性輝く大学」を目指すとともに、学生・教職員の協同のもと、学生が育ち、学生とともに育つ大学づくりを推進しています。