雑音の除去や機械の異常の診断に生かされる「ベイズ推定」
音声と骨の振動を使った「ノイズキャンセリング」
工場での作業中や、カーナビを使用して運転しているとき、周りの雑音が大きくて音声認識がうまくできないと、作業効率が低下したり、道を間違えて案内されたりします。そうした問題を解決してくれるのが「ノイズキャンセリング」という技術です。雑音の中から必要な音声を抽出するフィルタを、測定した結果から原因となる事柄を推論する「ベイズ推定」という確率論の考え方を用いて検討します。雑音が大きい場所でも、よりきれいな音声を必要とする場所を想定し、「音声」と「話すときに生じる骨の振動」という2つの情報から適応環境に即したシステムモデルを考察していきます。
音と振動のわずかな相違から異常を予知
稼働中の機械から常に発生している音と振動から、機械の劣化や不具合を検知するシステムの研究も進んでいます。正常時の音と振動のデータを収集してベイズ推定によって機械の状態を数値化し、その変化から異常を予知するのです。機械の稼働に影響しないわずかなキズも、放置すれば大きな故障につながりかねません。トンネルなどコンクリートの強度を調べる打音検査では、熟練者でないと亀裂や腐食の正確な把握は困難ですが、数値で表すことができれば、人間の感覚に頼ることなくだれでも異常を判断できます。
生活音を活用した高齢者の見守り
超高齢社会となった日本では、一人暮らしのお年寄りが増加しています。万が一の事態に備え、動画を使った見守りサービスがすでに提供されていますが、プライバシーに配慮する必要があり、それゆえに動画には死角が生じてしまい、万全とは言い切れません。そこで、生活音の相違という情報から高齢者を見守るシステムが導入され始めています。「いつもなら起きて朝ごはんを食べている時間帯なのに、動いている音が聞こえない」とか「倒れたような音がした」など、音の変化から状況を把握することができます。より広範囲なエリアをカバーできる点でも、音環境の活用が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 地域創生学部 地域創生学科 地域産業コース 教授 折本 寿子 先生
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