「知る権利・表現の自由」と「青少年の保護」は両立するか?
現代社会に欠かせないインターネット
友だちとの連絡や情報収集に、インターネットは便利なツールです。日本でも1990年代後半から広まりました。2010年頃からスマートフォンが爆発的に普及して、私たちの生活は便利になり、経済も発展してきました。
危険を防ぐためのフィルタリング
携帯電話の普及により、青少年もインターネットを利用できるようになった一方、悪質な被害に遭う事件も急増しました。そのため、日本の政府と通信会社が協力し、インターネットの利便性を守りながら青少年を保護するために「青少年インターネット環境整備法」が制定されました。「フィルタリング」はこの法律を根拠に、携帯端末からインターネットを使うときに、出会い系サイトなどの違法・有害コンテンツへのアクセスを制限する仕組みです。
この法律が成立した2008年に普及していたガラケーは、契約した電話会社の回線を経由して、インターネットにつながっていました。しかしスマートフォンは無線LAN経由でもつながるために、現在では端末にフィルタリングが実装されています。このように技術の変化に合わせて法律の仕組みも進歩します。
「知る権利・表現の自由」との両立
憲法21条は「知る権利・表現の自由」を保障しています。自由に発言し、情報に接することは、政治や経済の発展の基礎です。「青少年の保護」と「知る権利・表現の自由」という2つの価値のバランスが大切です。
本やテレビ番組の制作などでは一定の規律が保たれていますが、インターネット上では誰もが自由に表現できるため、フェイクニュースが出回ることもあります。本来なら間違った情報は誰にも見向きもされずに自然に淘汰(とうた)されますが、それは、受け手側の情報リテラシー(情報を判断し、使いこなす能力)が大前提です。
また、インターネットはグローバルに広がっています。国による価値観の違いもあり、日本の法律だけでは対応できません。どうやって日本の法律と国際社会を調和させていくかも課題となっています。
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東京大学 法学部 教授 宍戸 常寿 先生
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