講義No.12046 教育

読書を通して「小さな人」を「素敵な人」に育てる国語教育の役割

読書を通して「小さな人」を「素敵な人」に育てる国語教育の役割

心に残る、新美南吉『ごんぎつね』

あなたは、小学校四年生の頃、国語の授業で新美南吉の『ごんぎつね』を読んだことを覚えているでしょうか。主人公の小ぎつね「ごん」は、いたずらばかり繰り返します。ある秋、兵十のウナギを盗んだことを後悔したごんは、つぐないに栗や松茸を兵十の家にこっそりと届けます。けれども、最後に、ごんは、兵十に火縄銃で撃たれて死んでいきます。兵十に「おまえだったのか」と聞かれて、目をつぶったままうなずく、ごんの様子を描く最後のクライマックス場面は、多くの読者の胸に悲しく残っていることでしょう。

幼い子ども? それとも一人前の大人?

さて、ごんは「幼い子ども」、それとも「一人前の大人」ですか? 一人で読む読書なら、それは読者の自由な想像に委ねられます。でも、国語の授業は、人物についての大切な設定をみんなで共有した上で、一人ひとりが自分らしい感想をもつことが重要です。書かれている言葉を詳しく読んで自分らしい感想をもち、仲間と伝え合う学びこそ面白いのです。そんな『ごんぎつね』の授業ができる先生を育てることは、教育学の重要な役割です。
ちなみにごんは、「大人の若者ギツネ」です。「子ぎつね」ではなく、「小ぎつね」と書いてあります。それを共有せずして、最後に「うなずいて死んでいくごん」の心情について、意見を出し合い、話し合うことは無駄です。

物語を読むことは、たくさんの人生に出会うこと

国語教科書には、多くの物語作品が載っています。6年間の国語授業を通して、物語の読み方を指導し、仲間とともに物語を詳しく読むことの面白さを教えることが、教育学を学んだ小学校教師の大きな仕事の一つです。人は誰でも、たった一度きりの人生を、少しでも豊かにしようと精一杯に生きています。優れた物語には人間が生きることの真実が描かれています。多くの物語を読むことは、数え切れないほどの多くの人の多くの人生に出会い、人生を学ぶことに他なりません。読書は、自分という「小さな人」を「素敵な人」にと、きっと育ててくれます。

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桃山学院大学 人間教育学部(※2025年4月開設) 人間教育学科 教授 二瓶 弘行 先生

桃山学院大学 人間教育学部(※2025年4月開設) 人間教育学科 教授 二瓶 弘行 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

4年前の春、本学が新しく開学して以来、何十人もの卒業生が日本全国の街で、今日も小学校教師として頑張っています。まだ未熟な若者だった彼らが、4年間の大学生活で大きく成長しました。教育現場に精通した大学教員陣との学び、インターンシップや教育実習などの学校現場体験での生きた学び、そして少人数クラスで同じ志をもつ仲間とチューターとの密接な学び。そんなさまざまな学びを通して、小学校の「先生」として生きていくための実践的指導力を育んでいきます。小学校教師になるという夢の実現のため、一緒に学んでいきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

桃山学院大学に関心を持ったあなたは

大学4年間は、実社会で活躍する前の最終教育期間です。実社会で問われるのは、解決すべき課題を見出し、その課題を具体的に解き、そして実行する力です。この課題解決と実行のためには物事の本質を見抜く力を自らが獲得していかなければなりません。
桃山学院大学は「自ら学ぶ力」をはぐぐむ大学。勉学、クラブ活動、ボランティア活動、海外研修、キャリア支援など、学生が自身の能力を自覚し、4年間で磨き上げていくための環境整備に力を入れています。
みなさんも桃山学院大学で「自ら学ぶ力」を身につけませんか。