国を超えた「法による平和」、「人間のための平和」

弱肉強食の国際社会
今、私たちは危機の時代を生きていると言っても過言ではありません。戦争や紛争は終わりが見えず、気候変動や貧困、格差、人権問題など難しい問題が山積みです。自由や民主主義、人権、法といった第2次世界大戦後に築かれた普遍的な価値観は後退し、力による現状変更が横行して、国際社会は弱肉強食の世界に向かいつつあります。こうした状況を打破して平和な世界をつくっていくためには、「法による平和」と「人間のための平和」の2つの観点が重要です。
国際社会の憲法(法の支配)を
国際社会が弱肉強食になってしまうのは、国際社会の上に立つ政府や権力が存在しないという構造的な要因にあります。この中で秩序を形成していく上でのカギは、1つ目に国家を従わせる国際法、2つ目は国家をつなぐ国連、3つ目は国家を動かすNGOや市民の力です。
「国際法」は、国内法に比べると強制力が強くありません。国際法は国家間の合意に基づくものであり、国際司法裁判所が裁判を行うには紛争当事国の合意が必要です。一方で、国際法が国家間の権限の調整や、人権や環境といった国際社会全体の利益に重要な役割を果たしているのも事実であり、国際法はまだ成長途上なのです。この国際法を人権・人道など普遍的価値を体現する規範として広げ、国際社会の正義を実現する、いわば国際社会の憲法たるべき「世界法」「世界市民法」の構築が必要です。
人間のための平和を
そして、こうした法によって実現される平和が人間のためのものでなければ本末転倒です。冷戦後に登場した「人間の安全保障」という概念は、一人一人の生命、生活、尊厳を守ることを目標としており、すべての人の自由と可能性を実現するために、国家の安全保障を補完するものとして重要視されています。
平和を考える上で大切なのは、まず国際社会で起きている問題を知ることです。無関心こそが平和の最大の敵なのです。そして、知った問題を自分の問題として共感し、問題解決のために何ができるのかを考えて行動することが求められています。
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先生情報 / 大学情報

創価大学法学部 法律学科 教授中山 雅司 先生
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先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?