歴史を学ぶことは異文化体験なり~中世・武士の時代をさぐる~
中世・武士が残した戦闘報告書
日本の中世(鎌倉、南北朝・室町および戦国時代)には、各地の戦闘に動員された武士が作成した「軍忠状」と言われる戦闘報告書が多く残っています。武士は、戦いが発生したときにどうやって動員され、いつ、どこで戦い、どのような活躍をしたかなどを軍忠状に記し、現場の指揮官に提出することで手柄が認められ、将軍から恩賞を獲得していたのです。また、神や仏も戦いに重要な役割を果たしていました。戦いにあたって将軍は神社や寺に祈祷を命令し、その礼として寺社に土地などを寄進することもありました。
この軍忠状を分析することで、武士の戦い方や主力兵器、ひいてはこの時代の軍事制度がどういう仕組みで動いていたのかがわかってきます。
「釣り合い」にこだわる中世の人々
武士が活躍し、多くの軍忠状が作成された中世という時代は、現代につながる日本文化の要素が生まれた時代でもあります。例えば、庶民が店で茶を飲む喫茶の習慣や、茶の湯、華道、能、また和風建築の基礎などです。
その一方で、中世の人々の価値観や行動様式には今とまったく異なるものもあります。そのひとつが「釣り合い」を重視する考え方です。例えば争い事で、相対する集団との間で戦死者やけが人などの損害が同程度にならないと「釣り合わない」と判断し、攻撃を止めないことで紛争が終わらず、その結果紛争が拡大することもありました。この考えは人々の間で交わされる贈り物にも見られ、釣り合わないと思うと足りない分を要求することもありました。この釣り合いへのこだわりは現代人からは異質なものに見えるでしょう。
昔の価値観に触れる
このように歴史や日本史を学ぶということは、今につながるものを発見すると同時に、異質な価値観や文化に触れることでもあるのです。言い換えると文字や史料を通した異文化体験です。何百年も前の日本人の常識は今のあなたと同じではないでしょう。では、今の価値観や常識はどう形成されてきたのか? 歴史学はそれを追究する道でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
帝塚山大学 文学部 日本文化学科 准教授 花田 卓司 先生
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