中世ドイツの手紙から、人々の生活風景や言葉を読み解く
自由に表現し始めた15世紀のドイツ
ドイツには、まだ検証されていない、古い公文書や私文書がたくさんあります。そのひとつが、15世紀に書かれた手紙です。中世のヨーロッパでは、文書の共通語としてラテン語が使われていました。現在の英語が、世界の共通語になっている感覚です。14世紀ごろになると、ドイツでは文書が次第にドイツ語でも書かれるようになります。自由に書き、表現できるようになった時代でもあるのです。
意外に今と変わらない手紙のやりとり
当時、手紙をやりとりできるのは貴族など、ごく一部の人に限られていました。ある兄弟は手紙で、「お金を貸して欲しい」「馬を送ったから受け取って」など、現代の家族間とさほど変わらないやりとりをしています。馬は現代でいえばクルマのようなものです。ほかに、クリスマスの贈り物の目録や、喧嘩の仲裁を依頼する文書などもあります。研究にあたっては、手紙に書かれた単語から方言を読み解き、差出人の育った町なども考え合わせて、書いた地域を推測します。書いたのが本人か、書記官が代筆したのかも、字のクセや書き方などで吟味します。検証が進めば、15世紀のドイツ語のありようが見えてくるはずです。
ドイツ語とオランダ語・英語との関係
実際には、手書きの文字を一つずつ書き起こして辞書で調べながら単語にし、意味を解読します。単語を一つひとつみると、オランダ語や英語に通じる点があることがわかります。そもそも、ドイツ語の前身である西ゲルマン語からオランダ語や英語が派生したという経緯もあり、似ている単語は数多くあるのです。例えば、「兄」はドイツ語でBruder、オランダ語はbroer、英語はbrotherという具合です。15世紀の文書を検証すると、そうした言語の共通点が見えてくるなど、新しい発見もあります。さらには、その時代の人々の暮らしや思い、歴史などをひもとくことにもつながっていくのです。
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麗澤大学 外国語学部 外国語学科 教授 草本 晶 先生
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