私たちの「選択肢」は、社会から制限されている?
何気なく受け取っている「らしさ」
生物的な性差ではなく、社会的な認知としての性差のことを「ジェンダー」といいます。私たちは日常的に何気なくテレビやCM、広告などのメディアに触れていますが、その中で自分のジェンダーに求められる「らしさ」という概念を受け取っていると考えられています。美容用品のカミソリの広告を例に見てみると、男性用はシルバーやブルーで「カッコよさ」「サムライ」がイメージされており、女性用はピンクの背景に「シルキー」「ビーナス」といった柔らかい印象の言葉が使われています。広告などのメディアでは、その社会や文化における大体の人が納得しそうなものが戦略的に採用されています。そのため社会の中で求められる「男らしさ、女らしさ」が言葉やイメージの中に多く反映されています。
「こうあるべき」とは言わないが
例えば子ども向けのおもちゃの場合、「女の子の人形とお友だちシリーズ」のような広告を見てみると、女の子は、髪形や「おしゃれ好き」など外見に関することが説明されています。一方、男の子は「甘えん坊で、サッカーが得意」など外見には触れられていません。また女の子向けのプログラミングゲームの広告では、「女の子が大好きなファッションやクッキングなどをテーマにした」と書かれています。いずれの例も「こうあるべき」と明確に言ってはいません。しかしそこからは、外見重視で、家庭的という社会が求める理想の女性像をとらえることができるのです。
自分らしく、自由に選ぶために
メディアなどを通して、無意識に社会の中でのジェンダーの理想像に影響を受けていると考えると、私たちは物を選ぶ時だけでなく、職業や家庭での役割についても自由に選択できていないのかもしれません。メディアの言語などを分析研究する中では、まずその制限に気づくことが大切で、決めつけない宣伝のあり方なども考えていくことが必要です。また、個人が情報を適切に読み解く力を持つことも、「自分らしさ」を獲得する大きな一歩になるでしょう。
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