光る有機化合物が細胞を見える化する「バイオイメージング」の可能性

光る有機化合物が細胞を見える化する「バイオイメージング」の可能性

光で細胞を観察する「バイオイメージング」

ビタミンの一種である葉酸に由来する、ある化合物に紫外線を当てると、光ることが発見されました。このような現象を「蛍光」と言います。葉酸のままでは光らないものの、変換することで新たな機能を持たせることができたのです。このように蛍光機能がある化合物の中には、特定のタンパク質とつながったり酵素と反応した時にだけ光るものがあります。この性質を利用して、特定の細胞だけを光らせて細胞や組織の仕組みを観察する手法を「バイオイメージング」と呼びます。病気のメカニズムの解明につながるかもしれないと、今非常に注目を集めている分野です。

見つけたいものを光らせる蛍光物質

アルツハイマー病やパーキンソン病では、脳内のタンパク質がシート状に重なったような構造に変化しています。しかし、なぜこのような変化が起きるのかはわかっていません。もし、タンパク質がシート状に変化した時に、蛍光物質とうまくつながらせることができれば、細胞が光り、病気の初期段階から観察することが可能になります。
既に、折ったり開いたり形を変えた時に光の色が変わる蛍光物質の開発には成功しており、現在はその蛍光物質が、タンパク質がシート状になった時にも、シートとシートの隙間に入り込んで光を発するかどうかを確かめる研究が進められているところです。

治療困難ながんの薬の開発にもつながる

さらにがんの治療への応用も期待されています。がん細胞はDNAを複製しながら増殖しますが、一部のがん細胞は葉酸の化合物を細胞の中に取り込んで増えていきます。もし、がん細胞の中だけで光る葉酸の蛍光物質を作ることができれば、がん細胞の位置を特定でき、その増え方も確認することができます。さらに蛍光のエネルギーによって発生する活性酸素が、がん細胞だけを破壊してくれるかもしれません。蛍光機能を持たせた小さな有機化合物は、治療が困難だった病気の解明や創薬につながる、大きな可能性をもっているのです。

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長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部 フロンティアバイオサイエンス学科 教授 河合 靖 先生

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メッセージ

高校生のあなたに一番伝えたいことは、悩んだ時は「やってみて」ということです。やってみたいことがあっても、自分には無理かもしれないとブレーキをかけてしまうかもしれません。でも、私は好きな化学の本をたくさん読んで、世界がどんどん広がりました。「俺は研究者になるんだ」と突き進んでいたら、本当に実現しました。
「何かのきっかけがあって、やろうという気持ちがあれば、なんでもできる」、これが私の経験からのアドバイスです。悩んでいるということは、やりたい気持ちがあるということ。まずはやってみることからです。

先生への質問

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長浜バイオ大学は日本でただ一つのバイオ系単科大学で、1学部3学科(フロンティアバイオサイエンス・バイオデータサイエンス・アニマルバイオサイエンス)の構成です。医学、薬学、農学、理学、工学など、さまざまな学問領域を融合したバイオサイエンスをトータルに学ぶことができます。1年次から専門性の高い実験を行い、卒業研究を除いた3年間で864時間という実験は、群を抜いた時間数です。バイオサイエンス学科内の「臨床検査学プログラム」では、臨床検査技師の国家資格取得をめざして、少人数指導を行います。