モチベーションのUPには? 脳科学でひもとく報酬と記憶の関係
「自分にご褒美」は本当に効く?
勉強のモチベーションが上がらないとき、どうしていますか。「1時間勉強したらおやつを食べていいことにしよう」「2時間勉強したらゲームを30分やっていいことにしよう」そんなふうに自分に「ご褒美」を用意すると、案外やる気が出てくるものです。このようなモチベーションのメカニズムを脳科学でひも解いてみると、さまざまな脳の働きがわかります。
報酬と記憶に関する脳のメカニズム
ではご褒美、つまり「報酬」が高い時と低い時で勉強の効率に差がでてくるのでしょうか。その仕組みには脳の働きが深く関係しています。勉強で何かを「憶える」際には、脳でいえば海馬など記憶関連領域の働きが重要です。報酬を予測すると、「動機づけ」に関連するドーパミン神経系の「報酬関連領域」が反応します。これらの脳領域のやりとりが活発であるほど、モチベーションが上がり、より憶えられる仕組みになっているのです。それらが実際に脳内でどのように相互作用しているかは、fMRI(機能的磁気共鳴機能画像)を使い、脳内の血流量の変化を可視化することでわかります。
ちょうどよい難易度がやる気を促す
記憶の難易度と報酬の関連性を調べる研究では、次のような実験を行いました。思い出すのが難しい単語と易しい単語を、低い報酬しかもらえない状況と高い報酬がもらえる状況で思い出してもらうものです。結果としては、思い出すのが難しい単語の方が、報酬によってモチベーションが上がり、より思い出すことができるようになりました。簡単すぎない「ちょうどよい」難易度であることにより、報酬がより効率的に記憶を思い出させる、つまり報酬の費用対効果が高いということです。
ドーパミン神経系の領域と記憶に関連する領域の相互作用は、報酬の効果が高い人ほど強くなっていました。こうした脳のメカニズムを理解して、自分がどれくらいの難易度でどんなご褒美があればやる気が出るのかを知れば、自分自身でモチベーションを上げる方法や、効率良く記憶する方法が得られるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
東北福祉大学 総合福祉学部 福祉心理学科 准教授 重宗 弥生 先生
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