鍵は「だしの香り」にあり! 秘めたかつお節パワーでおいしく減塩
頭の中で味を誤解?
「味」は、舌にある味蕾(味覚芽)という組織で刺激が受け取られ脳で認識されますが、刺激と認識がズレることがあります。ある実験で、砂糖水にいちごの匂いを付けるとより甘く感じ、食塩水にしょうゆの匂いを付けるとより塩辛く感じることがわかりました。私たちは脳で味を感じ、同時に香りによる誤解もしているのです。中でも、口から鼻の中に入ってくる食べ物の匂い(フレーバー)は味に影響しやすいと考えられます。
減塩の鍵は「かつおだしの味と匂い」
WHO(世界保健機関)は2025年までに世界の人々の食塩摂取量を30%減らすよう提唱しています。日本人は食塩摂取量が多く、薄味の料理をおいしくないと感じる人もいます。おいしく減塩するにはどうすればいいでしょうか。ここで鍵となるのが「かつおだしの味成分」です。そもそもだしには、うま味成分が豊富で、料理の味をおいしく整えてくれますが、かつお節にはヒスチジンというアミノ酸も多く含まれています。このヒスチジンに塩味増強効果があることがわかりました。さらに、おもしろいのは、「かつおだしのフレーバー」です。薄い食塩水にかつおだしのフレーバーを付けるだけで、脳で「うま味がある」と誤解して、私たちはおいしさを感じることがわかったのです。
日本人は昔から昆布とかつお節を使った「合わせだし」を愛用してきました。かつお節のイノシン酸と昆布のグルタミン酸の相乗効果でうま味が飛躍的に強くなることが有名ですが、さらに減塩にも、かつおだしのヒスチジンとフレーバーのおかげで、有効であることがわかりました。昔の人は成分のことは知らずとも、理にかなっただしの使い方をしていたのです。
食文化の刷り込みが大きく影響
ここで紹介した「だしの匂いの効果」は、どうも子どもの頃にかつおだしと縁のない生活をしていると、無さそうです。中国では、かつおだしを魚臭い、おいしくないと感じる人が多いことが報告されました。食文化の幼い頃からの刷り込みは、「匂いの感じ方」にも大きく影響を及ぼすのです。
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同志社女子大学 生活科学部 食物栄養科学科 教授 真部 真里子 先生
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