海だけではない! 大気中にも漂うマイクロプラスチック
大気中に漂うさまざまなもの
近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題になっていますが、実は大気中にもさらに微細なプラスチックが漂っています。また大気中には、黄砂や、海水のしぶきが瞬間的に乾燥してできる海塩粒子、人工物が細かく砕かれたものなども漂っています。これら環境中のいろいろな物質が大気から森や水、土へどのように移動しているのか、最終的にはどこに行くのか研究が行われています。
森は大気を浄化する
大気が森を通り抜けると、大気中の汚染物質は木の葉の表面に絡めとられます。つまり、森は大気をきれいにするフィルターの役割をしているのです。葉の表面に絡めとられた汚染物質は、一般に雨水に洗い流されるため、森の中に降る雨水を分析すれば、森がどのくらい大気をきれいにしているのかがわかります。都市に囲まれた神奈川県川崎市西生田の森を使った研究では、大気汚染物質としてマイクロプラスチックが森の木の葉の表面に吸着していることが突き止められました。しかし、雨水を分析してもプラスチックは検出されませんでした。葉の表面はワックス-クチクラ層で覆われているため同じ疎水性を持つプラスチックと結びつきやすいのです。葉の表面からプラスチックを分析する方法がいま開発されています。
塩との関係性からみえてくるもの
大気中のプラスチックには2種類あると考えられます。海に流れ込んだプラスチックがさらに細かく砕かれて、波の飛沫から大気に入る海由来のものと、私たちの身の回りにたくさんあるプラスチックがこすれて、微細なかけらが大気に放出される都市由来のものです。プラスチックだけを分析してもどこから来たのか不明ですが、大気中の海の塩との関係を調べると、プラスチックの起源についても情報が得られそうなことがわかってきました。
大気中のプラスチックに関する研究は始まったばかりで、大気中にどのような種類のプラスチックがどのくらい漂っているかはまだわかっていません。環境での動きや人体への影響など、さらなる調査が必要です。
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日本女子大学 理学部 化学生命科学科 教授 宮崎 あかね 先生
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