AIで世界を「最適化」すると、私たちの生活と環境は激変する!
コンテナの並べ替え
私たちの日常生活は、輸出入によって成り立っています。その多くは、貨物船に乗せたコンテナでやりとりされます。港には全国からコンテナが集められ、それらを乗せた貨物船が出港します。逆に、世界中からやってきた貨物船からコンテナを降ろし、日本各地に分散されます。各コンテナは大きくて重いので、積み上げた一番上からしか動かせません。港の限られた面積と機械で効率よく積みおろしをするためには、コンテナを整理する必要があります。
最小限の手順を考える
まるで積み木並べのゲームのようですが、船が予定通りに到着するとは限りません。ある貨物船には、一隻で9000個ものコンテナが搭載されます。たとえ動かすコンテナが10個でも、組み合わせパターンは1兆通りを超えます。それらがランダムに来港しては、スーパーコンピュータで計算しても間に合いません。このようにパターンが指数関数的に増えて解を導き出すのがきわめて困難になることを、「組み合わせ爆発」と呼びます。
データサイエンスが世界を救う?
現場では、クレーンオペレータの勘と経験による並べ替えで業務が進んでいます。しかし人工知能(AI)を使って、「時間をかけた最高の手順」ではなく「短時間でそこそこ良い手順」を入手可能な最適解として導き出せれば、積みおろしが早くなるだけでなく無駄な動きによるエネルギーロスも防げます。
これは、小売業界で起きている「売れ残り食品の廃棄」にも有効です。スーパーやコンビニでは日々、ロス率が少なく粗利の高い仕入れ方法を探っています。しかし商品は何百種類もあり、天候や近所でのイベントなど、不測の事態で売上予測は外れるため、AIではまだ計算しきれません。それらを計算して最適解を出せるAIを開発できれば、業界の利益構造の改善と環境保全が同時に達成できるのです。
社会やビジネスの課題を見つけ出し、AIやICT(情報通信技術)およびビッグデータを使いこなして、新たな価値を創り出す。これは今世界が注目しているデータサイエンスの学問領域です。
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先生情報 / 大学情報
大阪工業大学 情報科学部 データサイエンス学科 教授 平嶋 洋一 先生
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