地震動補間と画像の修復技術は似ている? 機械学習の可能性
機械学習を役立てる
機械学習アルゴリズムは、例えば購入した商品に合うファッションアイテムの組み合わせを提案するシステムなど、社会のあらゆる場面で役立てられると考えられています。ただし、まだ前例のない分野が多いため、機械学習を適用しようとすると新たな課題が発生し、アルゴリズムの改良を求められることがあります。
地震動補間と画像修復の共通点
例えば機械学習を地震動の補間に活用する研究が行われています。日本には地震の観測所が1000カ所以上ありますが、山間部や沿岸部など観測所を建てにくい場所のデータは収集が困難です。そのため近隣の観測所のデータをもとに震度や被害の推測が行われており、機械学習を導入すればさらに効率が上がると期待されています。
観測できない部分を周辺のデータから導き出す方法は、破損した画像を修復する技術にも使われています。このとき使われる機械学習アルゴリズムには、地震の震度を推定するときと同じ数式が使われています。
アルゴリズムの改良が必要
ただし共通している数式をそのまま機械学習に使用しても、地震の震度を正しく計算できません。画像修復と震度の推測では、重視するポイントが異なるからです。例えば人物画像を修復するときは、画像内の顔の位置に関係なく「この特徴があるパーツは目だ」などを判断して必要な画像を補います。同じ条件がそろえば、どの位置にあっても同じ結果を返すことを前提にしているのです。
しかし震度の場合は周囲の観測所から得られるデータが同じでも、推定したい地点の条件によって異なる結果を返す必要があります。推定したい地点と観測所の間にある地盤のやわらかさ、断層の有無などによって震度は変化するからです。そこで地下の構造を考慮した結果を返すという枠組みを追加した、新たな機械学習アルゴリズムが開発されました。さらに改良を加えていけば、スーパーコンピュータを使わなければ不可能な高度な地震予測も手軽に行えるはずです。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 システム工学部 准教授 八谷 大岳 先生
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