スカスカの街に立ち向かう~まちづくりのこれから
「拡張と向き合う」から「縮小と向き合う」まちづくりへ
日本では明治時代以降、増え続ける人口に対応するために、住宅地の拡張や、道路や鉄道の整備など「拡張と向き合う」まちづくりが全国各地で推進されてきました。しかし現在は、首都圏を除く各地方で人口が減少し続けており、2050年から2100年にかけては、さらなる人口の減少が確実視されています。つまり現在は、「縮小と向き合う」まちづくりについての検討が急務となっているのです。
人口減の街で生じる課題
人口が減少すると、街の中に住む人のいない空き家、空き店舗、空地があちこちにでてきます。すると、それらをどう管理・処分するのか、防災上や防犯上のリスクをどう解決するのかという課題が出てきます。また、バスや鉄道も採算性の問題から運行本数を減らさざるを得なり、移動に課題が出てくるでしょう。そして、自動車で移動するにしても、橋やトンネルも古いから危険だけど、維持するための税金がかかりすぎるし、使う人が少ないから、全部は維持できないという課題も出てくるかもしれません。
住民の幸せを実現するためのまちづくり
今後は、これまで活用してきた土木計画や都市計画などの技法が効果的ではなくなるものもあるかもしれません。施設や交通機関などのハード面と、住民の生活をサポートするためのソフト面で、何が本当に必要なのか、何をどう運用すればいいのか、さまざまな視点から吟味する必要があります。まちづくりが未知と遭遇するわけですが、土木計画や都市計画はその中心であることには変わりなく、住民から意見や要望を聞くことをおろそかにせず、透明性を持って、事業の必要性や妥当性を客観的に評価したり、将来の街への道筋を設計・マネジメントしていく役割を担います。「縮小と向き合う」まちづくりでは、問題へのアプローチに工夫や変化、実験が必要ですが、これまでと変わらず、何よりもそこで暮らす人々の幸せを実現するために挑戦しつづけることが重要です。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪工業大学 工学部 都市デザイン工学科 教授 山口 行一 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
都市デザイン工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?