「分析化学」で新しい物質を発見し、生み出す!
新しい分析方法を作り出す「分析化学」
「分析化学」という学問は、物質の成分や量を計測する分野だと思われがちです。もちろんそれも目的のひとつですが、分析するための「方法」を作り出す分野でもあります。より精度や感度の高い分析方法が開発できれば、雑多な成分が混在した試料から、非常に微量に含まれる特定の物質を取り出すことが可能となります。つまり、これまで知られていなかった新しい物質を発見したり、生み出したりすることが可能となるということです。
生体から分離しづらい「金属タンパク質」
近年、生体中に存在する「金属タンパク質」に注目が集まっています。人間の体には、鉄や銅などの金属がとても微妙なバランスで必要とされており、多すぎても少なすぎても体に害を及ぼします。多くの金属は、生体中ではイオンとなってタンパク質と結合していますが、生体中の金属イオンがどういう形態で存在し、どういう動きをしているのかに関しては、まだあまりわかっていません。金属がとても微量であるとともに、さまざまな形態の物質が混在しているので、そこから金属タンパク質を分離して取り出すこと自体が難しいのです。それでも精度の高い分析手法を作り出すことで、金属タンパク質の分析が可能となってきました。
抗体の代わりに働く「DNAアプタマー」
遺伝物質として知られているDNAの一種が、特定の物質と強く結合するという特徴を持つことがあります。「DNAアプタマー」と呼ばれるこの特殊なDNAには、生体で病原体と強く結合する抗体と似た機能があることがわかっています。特定の細胞や細菌類、ウイルスに結合するDNAアプタマーを、抗体の代わりに利用する研究も進められています。高感度な分離分析手法を開発することで、性能の高いDNAアプタマーを見つけ出すことができるようになりました。
分析化学は、工業製品の開発に寄与するのはもちろん、生物の進化の秘密を解き明かしたり、医療に利用されるなど、あらゆる分野で必要とされ、また応用できる学問でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
埼玉大学 工学部 応用化学科 教授 齋藤 伸吾 先生
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