病気を見つける薬、治す薬
物理と化学と生物で早期発見・早期治療
放射線や光(物理)と化合物(化学)を使って、人間(生物)を、診て治す薬の開発が行われています。物理・化学・生物のすべてを使うことで、新しい薬を作ることができます。それぞれの性質を理解し、生かすことが、この研究のポイントです。また、色々な学問を組み合わせることで、新しい性質を持つ薬が生まれることも期待されています。病気を早期に発見するだけでなく、なるべく正常組織に影響を与えずに治療する薬の開発が進められています。
病変を可視化する薬剤の開発
例えば、がん細胞は正常細胞よりもブドウ糖を多く代謝する性質があるため、ブドウ糖に放射線を出す元素で標識をつけた薬(18F-FDG)を使うことで、がんを可視化できます。このように、体の中の分子や代謝の様子を見る薬のことを「分子イメージング薬」と呼びます。がんに集まった分子イメージング薬から出てくる放射線をPETと呼ばれる装置で画像化します。このFDG-PET検査は、ヒトでも利用されています。また、分子イメージング薬には放射線の代わりに蛍光を利用したものもあります。ただし、我々が透明人間ではないことからわかるように、光は体を透過しません。最近では、光よりも生体をよく透過する音を検出して画像化する光音響イメージングの研究も行われています。
病変をやっつける治療法の開発
放射線や光は、病気を見つけるだけでなく、治療に利用することもできます。これらの物理エネルギーと化合物を組み合わせることで、正常部位を残して、病変だけをやっつけることができます。最近認可された「光免疫療法」は、光を使った新しいがんの治療法です。この治療法で使っている近赤外光は人体に無害ですが、化合物にエネルギーを伝え、その化学構造を変えることができます。すなわち、人に害を与えず、体の中で薬を作ることが可能なのです。
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