思い切った「政治」が求められる現代
なんらかの秩序をつけるのが政治
「政治」と聞くと、国会で政治家が議論している様子をイメージするかもしれません。しかし本来の政治とは「人と人とがどうしていくのか」が出発点です。つまり政治とは、「なんらかの秩序をつけること」です。ただ、人といっても自分の考えを否定するかもしれない価値観を持つ存在のことで、それを「他者」と呼びます。例えば、自分だけの部屋なら、家具の配置は自分で決め、自分で秩序を作れます。しかし、きょうだいとの共有の場合、相手の持ち物やその配置に腹が立つこともあります。ルールを決める「領土争い」のせめぎあいが始まるのです。ちなみに蟻塚の中などにも整然とした秩序がありますが、この秩序は「政治」ではありません。利害の衝突がないからです。
「日本」は強くなったが、「地方」は弱くなった
江戸時代までの庶民には「日本」という意識がほぼなく、アイデンティティは村や家に帰属し、各地方でさまざまな特色がありました。例えば、言語も慣習も違う青森の農家と土佐の漁師は、おそらく話があまり通じなかったでしょう。それを中央集権システムとしてブルドーザーで均(なら)すように全国均一にしたのが明治維新でした。いわゆる「同規格の健康優良児的日本人」を作ったのです。おかげで日本の国力は強くなりましたが、一極集中社会を続けてきた弊害で、現在、地方では消滅が危惧される自治体が出てきています。小手先の地方創生では解決しない問題です。
現代は第三の過渡期
過去、日本に急激な政治的社会変化を起こしたのは、明治維新と第二次世界大戦です。そのときは「黒船来航」や「戊辰戦争」、「焼け野原の主要都市」などがありました。一方、今のように戦争がないのに、急激に人口が減っているのは、世界史上でも例がありません。日本は少子超高齢社会に突入し、世界の先頭でこの危機を疾走中です。ただ、ここをうまく乗り切れば、世界のモデルになり得ます。日本は今、思い切った問題解決の力量が問われているのです。
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先生情報 / 大学情報
奈良県立大学 地域創造学部 地域創造学科 教授 堀田 新五郎 先生
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