政治、経済、海外との関係。すべてが農業の未来につながっている
6次産業化が進む日本の農業
日本は今、農業の6次産業化が進んでいます。これは1次産業の農業と、2次産業の製造業、3次産業の小売業等の事業を上手く組み合わせて農産物の付加価値を高めるという取り組みです。そうして農業をビジネスとして成功させるには、多岐にわたるマネジメント力が不可欠であることは容易にわかるでしょう。農産物を生産する技術だけでなく、加工や販売なども工夫して、農産物の価値向上はもちろん、地域社会の活性化をめざす視点が大事になっています。
社会科学の視点から考える
海外を見ると、特に東南アジアの開発途上国では経済成長が進んで所得格差が広がり、農業の収益減少や担い手不足といった課題も顕著になってきています。これまで日本が経験してきたことを今、それらの国々は経験しようとしています。そこでの農業を発展させるには、農業だけをみるのでなく、経済や政策の動向、人々の消費のあり方、地域の人々の暮らしなどを総合的にとらえることが大切です。つまり、社会的な視点で農業をとらえる必要があります。
例えば、ベトナムはかつて計画経済の国でしたが、1986年のドイモイ政策を契機に市場経済に移行し、経済の仕組みを大きく転換しました。その結果、農業者の意欲が高まり、米や果実などを輸出できるまでに成長したのです。しかし現在のベトナムは日本などの外国資本が参入し、農地は工場用地などに転換され、若い労働力は他産業に流れています。要は、国の農業に影響を及ぼす社会的な環境が刻々と変貌しているのです。
現地で農業に関わることが世界につながる
政治や経済など社会的な環境が変われば、人の行動も農業の仕組みも変化します。その結果、農地や農村の独特の文化など多様な地域資源をどう維持していくかといった問題にも直面しています。農業の生産物である食料は、人間が生きていく上で不可欠なものです。だからこそ、地域の人や国内外の研究者、行政が知恵を寄せ合うことで、それぞれの国や地域の人々にとって望ましい農業のあり方を考えていく必要があります。
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先生情報 / 大学情報
佐賀大学 農学部 生物資源科学科 国際・地域マネジメントコース 教授 辻 一成 先生
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