「フューチャーデザイン」の視点で、地域の未来像を考える
政策づくりの新たな概念「フューチャーデザイン」
50年後、日本の人口は8000万人台になると予測されています。10年から20年後には、AI(人工知能)やテクノロジーの進歩により、現在の職業の約半分がなくなるとも言われています。その時、あなたの住んでいる地域や暮らしは、どのようであればいいと思いますか?
米国の先住民族イロコイ族による「イロコイ連邦」では、「偉大なる結束法」と呼ばれる憲法に基づき、国家として重要な意思決定をする際は、7世代先の人々になりきって考えてきました。こうした考え方をルーツに、地域の政策づくりの新たなあり方として提唱されているのが「フューチャーデザイン(FD)」という概念です。
ドラえもんの視点で、地域を考えてみる
これまで地域政策は行政が主体となり、目先の課題解決のために議論されてきました。しかし、22世紀からやってきたドラえもんの視点で考えると、将来は自動運転やAIの普及により現在の公共交通や公共サービスは不要になっているかもしれません。今の世代にとっては有効・有益な政策に対しても、疑問や異なる発想が生まれてくるでしょう。
岩手県矢巾町(やはばちょう)では将来の水道事業について、FDの手法を用いて住民を現世代・仮想将来世代に分けて意見交換を行いました。水道料金の安さなどを求める現世代と、今後のメンテナンスまで見据えた仮想将来世代が議論を重ねた結果、この町では水道料金を上げるという判断に至ったのです。FDの視点が政策をより創造的に転換した例と言えます。
現在の民主主義を問い直す
近年、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領誕生などのように、世論が二分され、社会を分断する事態が起こっています。これらの現象は、複雑化・多様化・高度化・専門化・不確実化する現代社会において、多数決だけで決める民主主義が限界を迎えている表れとも言えます。住民自らが主人公として未来志向で政策に参画するFDは、新たな民主主義の提起にもつながるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
福知山公立大学 地域経営学部 地域経営学科 准教授 杉岡 秀紀 先生
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