役に立つ流体力学

役に立つ流体力学

流体力学を利用したさまざまな技術

水や空気の流れなど、私たちの周りのさまざまな流れを体系立てて理解しようとする学問を流体力学と言います。その具体的な応用例を、二つに絞って紹介します。

深海に眠るレアアースの揚鉱技術

南鳥島沖の深海6000mの海底には、世界需要の数百年分のレアアース資源が存在しています。この資源を含んだ泥を引き揚げるには、特別なポンプが必要です。そのために、海水面から海底へと通した揚水管に圧縮空気を注入し、気泡の力で泥を引き揚げるエアリフトポンプの開発が行われています。既に水深200mの実験装置を用いた実験には成功していますが、深海までのエアリフトポンプはまだ研究段階です。例えば、水深3000mから小さな泡を入れると、水面近くでは泡は300倍の体積になり、管の中が気体だらけになってしまうと泥を揚げることはできません。そのため、小さな気泡を広く分散させるなどの工夫が必要となります。

超音波で切らずに手術

超音波を使うと、X線のCTや磁場を使うMRIと同様に体の内部の様子を調べることができます。しかし、超音波はCTやMRIと比べて解像度が低く、細胞レベルでの病変の発見は困難です。そこで、コンピュータに画像を学習させる「ディープラーニング」などを用いて画像の解像度を高める技術開発が行われています。また、超音波は手術の道具としての利用も期待されています。強力な超音波のエネルギーを体の内部に集束させることにより、腫瘍(しゅよう)などを焼くことができます。このように生体を傷つけない治療を、低侵襲(ていしんしゅう)治療法と呼びます。加えて、超音波は診断から治療、確認までを一貫して効率良く行える夢の技術となり得ます。
イルカなどは超音波を使って捕食したり高速移動したりしますが、そのような高度な情報処理の技術まで、人間はまだ到達できていません。超音波は物理学の中では古典的な分野ですが、工学的な技術開発の面ではまだまだ発展の余地があるといえるのです。

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東京大学 大学院工学系研究科 機械工学専攻 教授 高木 周 先生

東京大学 大学院工学系研究科 機械工学専攻 教授 高木 周 先生

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流体力学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学入試を考えるときには、どの科目が得意か、点をとりやすいかで進路を決めるのではなく、何に興味があるのか、一番面白いと思えることが何かを考えて突き進んで欲しいと思います。また、どんなに崇高な目的であっても、好きでなければ、そのことのために本気になるのは難しいと思います。ですので、まずは、自分の好きなもの、興味のあるものを一生懸命勉強して欲しいと思います。結果として、その事が人のためになれば、そんなに幸せなことはないかと思います。頑張ってください!

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東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。