鋳造からバリスタのラテアートまで~高性能注湯ロボット
「液体を注ぐ」ことはロボットにとっては高度な技
子どもは牛乳をうまくコップに注げずにこぼしたりしますが、大人になるまでにうまくできるようになります。コップの液体を運んだり、別の容器に移したりするのは、実はかなり高度な技術を要する動作なのです。人間は液体の表面や流れ方をじっと観察し、それに合わせて自分の動きを調整しながら運んだり注いだりします。これはロボットにとっても同じで、液面の揺れや落ちる速度などをセンサで感知、フィードバックして動きを細かく調整する必要があります。
しかし、ベテランのウエイターはお盆の上のコップをほとんど見ずに運ぶことができます。それは、自分がどう動いたらコップの水がどう動くかを、長年の経験から体で知っているからです。
センサに頼らず数式を使ってロボットを制御
例えば溶けた鉄を砂型に流し込む鋳造の場合、鉄は1500度の高温で発光しており、表面の状態をセンサで感知することができせん。この問題を解決するのが、「ベテランの技をあらかじめロボットに教える」技術です。「流体力学」で研究・発見された物理法則に従って作成した数式を、プログラムに組み込みます。容器の形状や液体の表面張力、粘性などの性質から、ロボットが注ぐときの速度、落ちた先にかかる圧力、液体が描く軌道などを計算し、求める場所にきちんと注げるように制御するのです。
ラテアートの上手なバリスタロボットの可能性
危険かつ、溶けた金属の注ぎ方によって製品の良・不良が決まってしまう鋳造業では、この技術が強く求められていますが、鉄は、溶けたときの性質が水とは大きく異なるので、ベテランの鋳造職人の動きを解析するなどの研究が続いています。
しかし、水や水に似た性質を持つ液体については、ロボットがセンサなしで正確に注ぐ技術が確立しています。この技術を応用すれば、例えば、コーヒーの表面に複雑な模様を描く「ラテアート」をするロボットも可能になるのです。
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山梨大学 工学部 機械工学科 教授 野田 善之 先生
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