メタンハイドレートとCO₂回収で低炭素社会へ
CO₂削減をさらに進めるために
気候変動の原因となるCO₂の削減は世界的な課題です。しかし、日本の電気のエネルギー源を見るとCO₂を排出する石油や石炭、LNG(液化天然ガス)といった化石燃料の割合が増えているのが現状です。これは全体の26%を占めていた原子力発電が、東日本大震災後にほとんどなくなったことが原因です。一方、CO₂を排出しない再生可能エネルギーは1%にすぎません。技術開発によってエネルギー利用の効率化は進み、電力消費量も、節約意識が高まったことで震災後は減少しています。しかし、原子力発電の再稼働が難しいことを考えれば、別の方法でCO₂削減を進める必要があります。
日本近海のメタンハイドレートの採掘
そのひとつが、メタンハイドレートの採掘です。メタンハイドレートは海底2~3kmの低温、高圧の場所にある氷状の物質で、中身は天然ガスの主成分であるメタンです。メタンのCO₂排出量は石炭の約60%なので、これを発電に用いることにより、大幅なCO₂削減が可能です。
日本近海には日本で使用される天然ガス100年分の埋蔵量があると言われています。採掘方法は開発中で、そのひとつ「ガスリフト法」は、海面から数kmの海底に下ろした回収管の途中にメタンガスの注入口を設けて、海面にあるメタンガスを圧縮機で注入して上昇流を作り出し、メタンハイドレートを吸い上げようというものです。
CO₂を吸着剤で回収する
発生したCO₂を回収する技術も開発されています。LNGの火力発電では、メタンが燃焼しCO₂と水に分解されます。燃焼で発生する熱のうち、発電に使用できるのは40%です。また、発生するガスの10%がCO₂です。このガスを、CO₂吸着剤を塗ったハニカム構造の多孔板の中に通してCO₂を回収します。ところが、この回収システムを使用するためには熱エネルギーが必要で、結果として燃焼熱の30%しか発電に利用できません。電気料金も30%上がります。つまりCO₂削減には、相応のコストがかかるのです。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 工学部 化学システム工学科 教授 松隈 洋介 先生
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