副作用発生のメカニズムを解明せよ! 個人に合わせた医療の実現
副作用の発生は人による?
あなたの身の回りに、「薬がとてもよく効く」という人、逆に「薬を飲んでもなかなか効かない」という人はいませんか。よく効く・あまり効かないといった効果の個人差とともに、副作用が一部の人にだけ発生し健康被害が起きる、といった個人差もあります。このような個人差は重大であればあるほど看過するわけにはいきません。どこの医療機関でも処方しているような一般的な薬であれば、なおさらです。同じ薬なのに、一部の人にだけ副作用が出るのはなぜか、それを防ぐにはどうすればよいかを調べる研究が、医療系薬学の分野で進められています。
一般的に処方される薬なのに
解熱鎮痛薬は、いろいろな診療科で一般的に処方される薬で、薬局でも市販薬として売られています。この解熱鎮痛薬は、血中の尿酸値が高い人が服用すると低い人と比較して、腎臓や肝臓の機能が低下する危険性があることがわかってきました。解熱鎮痛薬は、体内で産生されるシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを抑えることで炎症を鎮めるのですが、それ以外、例えば血管や血流などにも、機能の変化が起きます。尿酸値が高い人は「痛風」という疾患を発症するリスクが高いのですが、痛風にならなくても腎臓・肝臓の働きが弱まるらしく、そこに薬による血管・血流などの変化が加わることで副作用につながるものと見られています。
一人ひとりに合わせた「テーラーメイド医療」へ
薬の作用の個人差には、男女差や年齢差、遺伝子変異など、さまざまな要因が関連します。そのため、副作用が現れる原因を解明するためには、まず細胞実験や動物実験によってメカニズムの追究を行います。その成果をヒトでも確かめて、ようやく副作用を防ぐ方法が確立できるのです。この研究が進めば、診察時に簡単な血液検査などを行うことで、副作用のリスクを判断できるようになるでしょう。そうなれば、個々の患者さんの状況にマッチさせた、「テーラーメイド医療」が実現するはずです。
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福岡大学 薬学部 薬学科 教授 山内 淳史 先生
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