理論の世界から未来のスーパーコンピュータを展望
スーパーコンピュータの世界
演算を行うプロセッサ(CPU)を複数備える現代のコンピュータは、異なる処理を同時に行う並列処理が可能です。それが最新のスーパーコンピュータとなると、搭載するプロセッサが1千万個に及び、どのような順番、プロセスで処理を行うかによって、パフォーマンスが大きく変わってきます。こうしたときに役立つのが「グラフ理論」です。グラフと聞くと、棒グラフや折れ線グラフがまず頭に浮かぶと思いますが、英語ではこれらを一般に「チャート」と呼びます。ここで言うグラフとは、複数の頂点(ノード)同士を結ぶ線(エッジ)から成る図を意味します。
頂点の結び方と経路選択
効率性・信頼性の高い処理を考えるうえで、大きく2つのテーマがあります。1つ目は各ノードをそれぞれのプロセッサに見立て、どのように頂点を結ぶべきか(ネットワークの位相)。2つ目は並列処理に際しどのような道筋で各処理を行うか(経路選択)。この2つの巧拙が、計算パフォーマンスの善しあしを決めることになります。
最も鍵となるのは、同じノードを複数回使わずに経路を設定することです。これは数学的には「素(そ)である」ことを意味します。それが満たされなければ特定のプロセッサに負担がかかることになりますし、もしそのプロセッサが故障したときに、そのノードを経由するすべての経路の処理が動かなくなってしまいます。
生活にも役立つグラフ理論
このように、グラフ理論は最先端の計算機科学と理論の世界をつなぎ、次世代スーパーコンピュータをデザインするうえでも重要な役割を果たすと期待されています。一方で、グラフ理論自体は、私たちの普段の生活においても活躍します。ノードが駅でエッジが各鉄道路線だと考えれば、交通ネットワーク図になります。出発駅とゴール駅を決めれば、最も短時間ならこのルート、最も安い運賃ならこのルート、乗り換えを最小限にするならこのルートというふうに、目的にあった経路を探索することができるのです。
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先生情報 / 大学情報
神奈川大学 情報学部 計算機科学科 教授 ボサール・アントワーヌ 先生
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