アマガエルが教えてくれた「省エネ」通信ネットワークシステム
無線でつながる通信ネットワーク
大きなビルの中には自動販売機(自販機)がたくさん設置されています。その売上や在庫状況を把握するために通信ネットワークが使われます。ただし一つひとつの自販機をそれぞれ有線のネットワークで結ぶとコストがかさみます。そこで各自販機を無線ネットワークで結び、データを集約して送信するのです。例えば5階の自販機のデータを3階の自販機まで飛ばし、そこから1階に飛ばすバケツリレーのようなイメージです。こうしたシステムを「アドホックネットワーク」と呼びます。情報をリレー式に送るルートは固定されておらず、送信ごとに最適なルートが選択される仕組みになっています。
バッテリーで動かすシステムは省エネが課題
アドホックネットワークは、小型のセンサーネットワークやガスメーターのネットワークなどにも使われています。そこで問題となるのが電源です。自販機は電源があるので問題ありませんが、屋外のネットワークではバッテリーを使います。通信すると電力を消費するので、ネットワークを動かし続けるためには、電気を無駄なく活用しなければなりません。ところがアドホックシステムでは、各無線機ごとに通信量が異なるのでバッテリーの減り方にも差が出ます。電源を最も長持ちさせるには、どのような経路にすればよいか。ヒントは意外なところにありました。
アマガエルの求愛行動を参考にシステムを考える
アマガエルのオスは鳴き声でメスを引きつけます。これは「サテライト行動」と呼ばれ、鳴き声が大きいほどメスをよく引きつけるのです。したがって自分の周りにより大きな声で鳴くカエルがいると、鳴いても無駄です。そんなカエルは鳴くのをやめて体力を温存するのです。電池の残量をアマガエルの体力と考えれば、残量の少ない無線機は使わず、多い無線機を中継点として使えば、システム全体のバッテリーを長寿命で使用できます。これはサテライト行動型のネットワーク制御と呼ばれています。
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大阪公立大学 現代システム科学域 知識情報システム学類 教授 菅野 正嗣 先生
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