運動習慣と薬の併用効果を考える

運動習慣と薬の併用効果を考える

体の柔軟性は血管の柔らかさにつながる

体力テストの項目にある長座体前屈は体の柔軟性を測るためのものです。どうして柔軟性は必要なのかというと、けがの防止や、運動機能向上などが一般に知られています。最近の研究から、この柔軟性の新しい側面が発見されました。それは、体の硬い人は血管(動脈)も硬い傾向にあるということです。柔軟性には筋肉と腱(けん)の構造が関係しており、体内の血管(動脈)もまた腱に似た結合組織と血管平滑筋という筋肉で構成されています。これら結合組織の構造は遺伝や年齢の影響を受けます。そのため、体の柔軟性と血管の柔軟性が関係しているのです。

ストレッチは血管にも効果的か

血管(動脈)が硬くなると「動脈硬化症」を引き起こす危険性が高くなります。動脈硬化が進むと心筋梗塞や脳卒中といった病気になりやすくなります。動脈は加齢とともに硬くなるのは避けられません。しかし、もし体の柔らかさが関係しているなら、ストレッチをすることで動脈硬化を予防できるという仮説が成り立ちます。ストレッチという簡単な習慣による効果が実証できれば、健康維持のために運動を継続するモチベーションにもなります。こうした関連性については今も調査が進められています。

日本の医療問題の解決に

生活習慣病である高血圧や糖尿病は、薬を処方される前に必ず生活習慣の改善を指導されますが、運動だけで血圧や血糖値を下げるのは容易ではありません。一方で薬はある程度の即効性があるため、薬だけに頼る人が多くなっているのが現状です。運動習慣と薬を併用することの効果が明らかになれば、薬の量を減らすことや、より効果的な薬の使い方ができます。高齢化が進む日本では、調剤医療費の増加による医療保険制度崩壊の危機に加え、1人がたくさんの薬を併用することにより副作用を引き起こす「ポリファーマシー」という問題も起きています。運動習慣と薬の併用効果を明らかにすることが適正な投薬につながれば、これらの問題解決の糸口になるかもしれません。

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帝京平成大学 薬学部 薬学科 准教授 山元 健太 先生

帝京平成大学 薬学部 薬学科 准教授 山元 健太 先生

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メッセージ

自分は何に興味があるのかわからないと悩んでいる人がいます。悩む必要はありません。大切なのは、「何をすればよいのかわからないから、何もしない」のではなく、わからないなりに行動することです。やってみなければわからないことがたくさんあります。目の前のことを1つずつクリアすることで、必ず新しい出会いが待っています。思わぬことに興味がわくかもしれません。目の前の人や物事を大切にして、自分の可能性を広げてください。

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