ラムネ菓子のように口の中で崩れる薬、OD錠とは?
臨床で汎用されている錠剤
私たちが病気の治療の際などに服用する薬には、注射やカプセル、粉薬など、さまざまな形があります。中でも、錠剤は臨床で汎用されている薬(製剤)です。
錠剤は、携帯性や保存性などの面で一定のメリットがありますが、特に子どもや高齢者には飲み込みにくいというデメリットもあります。気管に異物が入る「誤嚥(ごえん)」によって引き起こされる誤嚥性肺炎で亡くなる人のうち、薬の誤嚥が原因の事例も高齢者を中心に数多く報告されています。
誰でも飲みやすい錠剤、OD錠
こうしたデメリットを解消するために開発されているのが、「OD錠(口腔内崩壊錠)」と呼ばれる種類の錠剤です。ラムネ菓子のように、唾液や少量の水で口の中でホロリと崩れて飲み込みやすいのが特徴で、適切な量の薬剤を確実に摂取できて、誤嚥のリスクも大幅に減らすことが可能になりました。
例えば、慢性腎不全の患者のために、尿毒素を吸着させて便とともに排出させる活性炭を使用する薬があります。従来はカプセルや粉末の形で処方されていましたが、これらの形だと飲みづらく、必要な量の薬を服用できずに腎不全の症状を悪化させてしまう患者も少なくありませんでした。そこで登場したのがOD錠の形での治療薬です(正確には「速崩錠」ですが、臨床ではOD錠と同じ位置づけです)。活性炭の粒子は砂のようなものなのですが、これをくっつけて錠剤の形にして、なおかつ界面活性剤を含有させることで、口に含むと簡単に崩れるOD錠が開発されたのです。
さまざまな分野の知識をフル活用
OD錠の設計開発は決して簡単ではなく、薬学のほかに物理、化学、数学など、さまざまな分野の知識をフル活用する必要があります。そうして生み出される、より飲みやすい薬の存在は、患者自身が積極的に服薬習慣を守るようになる「服薬アドヒアランスの向上」につながっていきます。薬の形について研究する製剤学は、病に苦しむ患者により近い存在の薬を届けていく上で、欠かすことのできない学問分野なのです。
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