人間は「味の違い」がわからない? おいしさを感じる仕組みに迫る
食べ物の味は人で決まる
味の感じ方は人によって違いがあります。例えば同じチョコレートを食べたとき、甘いと感じる人もいれば苦いと思う人もいるでしょう。このように、味は「食べ物自体に備わっている絶対的な要素」ではなく、それを食べる人の感覚や経験、さらに食べているときの状況によって左右されると考えられています。味は人間の認知や記憶とも関係が深いため、心理学や脳科学を使って、食べ物をおいしく感じる仕組みを解明する研究が行われています。
同じ紅茶なのに違う味?
コーヒーや紅茶、ワインなど、生きるために必須ではない嗜好(しこう)品には、特に個人の好みや認知が反映されやすいと考えられています。例えば紅茶を使った実験では、事前に与えられる情報や「選択の有無」によって味の感じ方が変わるとわかってきました。まず実験の参加者に複数の紅茶のラベルを見せ、その中から飲みたいものを一つ選んでもらいます。実はどのラベルを選んでも、提供される紅茶はその中にない別の紅茶1種類だけです。しかし多くの人は、選んだものとはまったく異なる紅茶が出てきたことに気づきません。それどころかその紅茶をただ提供されたときよりも、おいしく感じていることがわかりました。このことから、その品物を自主的に選択した、という状況も味の感じ方に影響を与えていると考えられます。
味の感じ方を解明した先に
味を感じるメカニズムが解明されれば、消費者が食をよりおいしく楽しむための工夫ができると期待されています。例えば、「思っていた味と違った」という消費者と商品とのミスマッチを解消するために、味が正しく伝わるようなパッケージや広告を考えることも可能です。また、減塩や糖分カットなど健康に配慮した食べ物は、通常の商品よりも味が劣ると思われがちです。味の感じ方が状況や情報などに左右されることを利用して宣伝などを行えば、これらの食べ物もおいしく感じてもらえることで普及が進み、消費者の健康維持にも貢献できるでしょう。
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近畿大学 産業理工学部 経営ビジネス学科 准教授 大沼 卓也 先生
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