自然な状態で脳の活動を測るには?
脳の活動を測る新たな試み
生命活動の研究、ひいては医療や創薬のためにも、脳の働きの解明が欠かせません。そのための手法が、脳の活動を画像として観察する「脳機能イメージング」です。最近、麻酔をかけた状態とかけていない状態とでは、脳の働きが大きく異なることがわかってきました。それに、麻酔がかかった状態では、複雑な運動をすることもありません。多様で複雑な脳の活動を観察するためには、対象動物が自由に動ける状態での測定手法が望まれます。
活動を妨げない小型の測定装置
麻酔をかけない観察手法として、顕微鏡の下に頭を固定して手足を運動させる方法や、光ファイバーを用いた方法や頭に載せる小型の顕微鏡も開発されています。しかしながら、両手法とも対象動物はどうしても行動が制限された状態になってしまいます。
そこで、より小さく軽量化することで対象動物の行動をできる限り妨げないことを目指した測定装置の開発が進められました。軽量化された装置は長辺5mm程度の柔らかい電子基板に半導体素子であるCMOSイメージセンサとLEDを複数並べたものです。装置の重さは0.2g程度で、固定するための付属装置を加えても1g以下に収まります。レンズを使わない「コンタクトイメージング」という手法を用いることで広い範囲を高解像度で測定できます。さらに小型化する事により、創薬研究などに必要とされる1カ月程度の長期間の継続測定が可能です。
異分野融合が鍵
センサと光源の組み合わせを変えれば、ほかの対象を測定することも可能です。動物だけでなく、植物などの観測にも応用できて、植わった状態の植物の葉の動きや気孔の開閉の観測などが行われています。
この測定装置は、半導体の設計・製造技術と、生体観測のニーズ・技術が融合して完成しました。役立つものを作るためには、特定分野だけでなく、複数分野を融合させる研究が必要とされるのです。
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先生情報 / 大学情報
公立千歳科学技術大学 理工学部 電子光工学科 准教授 春田 牧人 先生
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