近未来のコンピュータとセキュリティ

超高性能な量子コンピュータが登場すると

今、次世代ICT（情報通信技術）として注目されているのが、量子コンピュータです。現在のコンピュータでは0と1のビットで情報が処理されますが、量子コンピュータは量子力学に基づいた多様に情報が重ね合わされた量子ビットを処理し、非常に優れた処理能力があります。スーパーコンピュータで１万年かかる計算を、わずか200秒ほどで解いたという検証結果を得ているほどです。課題も多く、実用化には時間が必要ですが、進歩はめざましく、すでにクラウド経由で私たちが使えるまでになっています。量子コンピュータが登場すると、ビジネスや研究分野、生活にも大きな影響を及ぼします。

量子の暗号技術の開発が活発に

量子コンピュータの登場で注目されているのが、セキュリティ技術の開発です。現状の暗号は、量子コンピュータに簡単に解かれてしまう可能性があるからです。ネットワーク上の暗号システムや、仮想通貨で使われる取引データのブロックチェーンなども見直す必要があります。今、世界中で未来に向けた新しい暗号技術が構築されつつあり、アメリカ国立標準技術研究所（NIST）においても、標準化を図る動きがあります。
また、量子コンピュータを使えば各企業がもつビッグデータを簡単に処理できるようになるでしょう。顧客情報などの個人情報を保護しつつ、業界発展のために共有したい情報を利活用できるプロトコル（規格・手順）を実現することも必要となります。

求められる未来のセキュリティ技術

さらに、私たちの身の回りにあるセンサのセキュリティにも配慮が必要です。スマートキーやスマートハウス、カメラといったIoTデバイスのセンサはごく小さなものですが、高いセキュリティを確立したい領域です。悪用されないように、持ち主であるか否かの認証を備える必要もあります。ポスト量子コンピュータのための技術開発が躍進している今こそ、多様な角度からのセキュリティ技術、情報技術の革新が求められているのです。

参考資料

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三重大学工学研究科情報工学専攻教授河内亮周先生

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情報工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

情報科学は、まだ一般の人が知らない未来に向けて挑戦する学問です。未来の社会をつくる分野であるともいえるでしょう。それだけに、自分の考えを論理的に説明し、相手に伝える力が必要です。その力を養うには、たくさんの人と対話することが有効です。相手が理解できるように話すことを意識してみましょう。
この分野で必要な数学だけでなく、本を読み、自分の考えをまとめるといった国語力も大切になります。何が問題なのかを発見し、正しく理解して正しく伝える力を、高校生のうちから身につけておきましょう。