「医工連携」による研究開発が生み出す新しい医療の世界
最先端の工学技術が医学の発展を支えている
CTスキャン(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)による画像診断、人工関節やiPS細胞による再生医療など、医学の世界は新しい技術の導入により目覚ましい発達をしています。こうした医学の発展を陰で支えているのが、実は工学技術です。例えば画像診断では、2次元データから3次元の立体映像を生成する最先端の画像処理技術が使われています。さらに、人工関節の開発では、患者の生体内に装着した人工関節がどのような動きをし、どれくらいの力が加わっているのかといった解析データをX線撮影データから生成する研究などが行われているのです。
「医工連携」で課題解決へアプローチ
「こういう形、構造の人工関節にすれば動きがよくなるはずだ」といった医学の定性的な研究に対して、「膝(ひざ)関節の摺動(しゅうどう:滑って動く)部分には、歩行時には何kgの力が加わるので、力を分散するために角度は何度にするべきだ」というように、工学側から定量的に解析し、数値化することで、研究は飛躍的に進みます。こうした研究は「医工連携」と呼ばれ、医学者と工学エンジニアが議論しながら研究を進めることで、医学や工学単独では解決できない課題へのアプローチが可能なのです。
専門プラスαの得意分野
例えば、「人工膝関節の構造モデルを作り、組込みシステムで動かしながら力学的な解析を行う」「拡張現実感を取り入れたゴーグルで、関節の映像に動きのデジタルデータを出して診察をサポートする」場合には医療と工学の知識が必要です。iPS細胞による再生医療の実現には、細胞の効率的な大量培養が不可欠ですから、生命科学と工学を組み合わせて臓器や組織の代替品を作り出すティッシュエンジニアリングが必要です。また、そのノウハウを取り入れたロボット培養機器の開発なども進んでいます。これからは、工学が理解できる医学者、医学の知識がある技術者のように専門プラスαがあるエンジニアが求められているのです。
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福岡工業大学 情報工学部 情報システム工学科 准教授 下戸 健 先生
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