それって動物? 植物? 不思議な生態の水生生物
水生生物が豊富な八郎潟
秋田県の八郎潟といえば、大規模な干拓事業により湖が水田地帯に生まれ変わった場所として知られていますが、実は、現在も水田を囲むように水域が残されており、その面積は田沢湖2個分弱です。そして、そこに住む水生生物の種類も豊富で、なかには、極めて希少な生物も生息しています。
そうした生物の中にシマミズウドンゲとコケムシがいます。これらは、いずれも、石などに付着したまま移動することなくほとんど一生を、同じ場所で過ごす付着生物の一種で、しかも動物です。
幻の動物シマミズウドンゲ
シマミズウドンゲは、見た人があまりいないため幻の動物と言われています。日本では秋田県を含む6県で生息が確認されています。体長が1mmほどの小さな生物で、円形の底盤の上に茎が立っている形をしています。このシマミズウドンゲは、春になって冬眠から覚めると、茎の先端から透明な「芽」を出します。これを出芽といい、出芽はめしべとおしべによる有性生殖ではなくメスもオスも関係しない、つまり無性的に作られる現象です。通常、出芽したものは成長して茎をさらに成長させた後、冬になると先端部が落ちてしまうのですが、中には根のような底盤をもった芽ができることがあり、これが本体を離れて別のものに付着し、生育することもあります。
種のような殻を作って増殖するコケムシ
一方、コケムシは、コケ状の形をした付着性の動物で、丸い種のような殻に覆われた休芽を作ります。殻は、はじめはしっかりと閉じていますが、水温が上がると開き(植物でないが発芽といいます)、その中にある芽を水中に放出します。水中に放たれた芽は、細胞分裂を繰り返しながら成長し、石などに付着して、生育します。
木の枝を切って土に挿すと、根を生やして育つように、植物では無性生殖で次世代を残すのは、よく見られることで、実は動物でも無性生殖(再生現象も含む)は割とよく見られる現象です。こうしたあまり知られていないユニークな生物の生体を解明することは、生物学の醍醐味と言えるでしょう。
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