医学と工学の融合で命を救う、人工心肺装置ECMOの挑戦
現代医療の発展に欠かせない臨床工学
ECMO(エクモ)は体から血液を取り出して人工心肺に流し、ガス交換して戻す体外循環システムです。人工呼吸器を使用しても酸素化が改善しない場合に使われています。重症患者に用いられることが多く、以前はECMOを使っても半数程度しか救命できませんでしたが、現在は使い方の研究が進み、救命率は約7割に届きます。こうした新しい医療機器の研究を行うのが、医学と工学が融合した臨床工学です。
新型コロナの治療にも貢献
ECMOに流す血液は、太ももの静脈からカニューレという管を入れて、心臓の下側にある下大静脈に固定して脱血するのが一般的です。これまでは、血液を体に戻す返血は、ガス交換した血液が全身に送られるように動脈から行っていましたが、動脈にカニューレという異物を挿入することで血栓ができやすくなるリスクがありました。そこで、日本ではあまり行われていなかった静脈への送血について、下大静脈、心臓の右房、心臓の上側にある上大静脈において酸素化の比較研究がなされ、良い方法が突き止められました。脱血する位置から心臓を挟んで離れている上大静脈に返血すると、ガス交換した血液がすぐにまたECMOに吸い込まれてしまう再循環が少なく、効率が良いとわかったのです。静脈へ返血する方法は特に肺の疾患に適しており、新型コロナウイルス感染症の治療にも用いられています。
大型動物を使う実験でも検証
新しい医療機器を海外から輸入したり、日本のメーカーと共同開発したりする際に行われる基礎研究では、動物や模擬回路を使って実験をします。ECMO研究では、大人が使用した際の救命率を上げることを目標に、体重60kg程のヤギに麻酔をかけて装置を付け、カニューレの位置を変えることでの違いが調べられました。大型動物を使う実験は一人では難しく、何人ものスタッフが携わる大仕事です。動物実験は医療の発展のために、できるだけ苦痛を与えないなどの厳しい倫理規定のもとで行われています。
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先生情報 / 大学情報
帝京平成大学 健康メディカル学部 医療科学科 臨床工学コース 准教授 東郷 好美 先生
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