講義No.14424 文化・教養学

ひげの仮面を着ける女性たち 中東の伝統文化とは?

ひげの仮面を着ける女性たち 中東の伝統文化とは?

湾岸地域の女性の身分証明書とは?

日本では、学生には学生証、社会人にはパスポートや運転免許証などの身分証明書があります。中東のペルシャ湾沿岸地域、特にアラビア半島では、遠くから見ると口ひげのような布製の「仮面」が女性の身分証明書のようなはたらきをすることがあります。仮面にはその人が未婚/既婚や、出身の村、宗派、家業、子どもの数などがマークやデザインとして施されています。男女が隔離されているイスラーム教社会では、知らない男女間で気軽に会話ができないので、見るだけでその人のプロフィールがわかるツールになっているのです。

仮面は自分のアイデンティティ

最初に女性が仮面を着けるタイミングは、初潮を迎えた時か結婚する時です。現在、主に着用しているのは50歳以上の女性で、彼女たちは近い血縁者以外の男性の前では決して仮面は取らず、家の中でも、入浴する時・寝る時・神にお祈りする時以外はほとんど取りません。ただし、それは女性が髪を隠すヒジャブの習慣のように、イスラーム教の教えにのっとったものではないといいます。昔は高貴な女性のみが仮面を着けることができる習慣があったりと、地域の伝統文化として誇りを持って着けているのです。日本の女性が伝統文化として着物を着るのと同じように、仮面は彼女たちのアイデンティティとしての意味合いを持っています。

女性の美を際立たせる仮面

また仮面には、ファッションやメイクの一部として女性の美を際立たせる効果もあります。仮面は藍染めの布で作られていて、藍には保湿効果、美白効果があるとされています。さらに仮面はオーダーメイドなので、華やかなデザイン、その人の長所を引き立たせて短所を隠すデザインにもできます。年配の女性はシミやソバカスを隠すために、大きめの仮面を着用したりします。
しかし、現代の若年層はあまり仮面を着けていません。そこで仮面をビーズでデコレーションしたり、人気キャラクターをデザインにいかしてみたり、次世代へ仮面文化を継承してもらうための取り組みが始まっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

秋田大学 国際資源学部 国際資源学科 資源政策コース 助教 後藤 真実 先生

秋田大学 国際資源学部 国際資源学科 資源政策コース 助教 後藤 真実 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

文化人類学、民俗学、中東地域研究

先生が目指すSDGs

メッセージ

私が中東に興味を持ったのは、語学留学で渡米した時にアラビア半島出身の留学生と仲良くなり、中東への偏見をなくすような仕事をしたいと思ったのがきっかけです。高校生の時は、将来、中東を研究して大学の教員になるなんて思いもしませんでした。進路を選ぶ時、目的が見つからなかったり、何ができるかわからなかったりするかもしれませんが、まずは好きなことを好きなように勉強し研究できる環境を見つけましょう。そして、自分が住んでいる環境から一歩外に出て、さまざまな体験を積んでください!

先生への質問

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秋田大学に関心を持ったあなたは

地球を舞台に活躍する資源スペシャリストを養成する「国際資源学部」、教育分野や地域社会における現場実践力を養う「教育文化学部」、地域医療の核となり人々の健康と福祉に貢献する「医学部」、独創的な発想と技術力を育む「理工学部」の四学部が連携し、地域に根ざし世界に発信する教育・研究拠点をめざしています。
四季の彩り豊かなキャンパスでは、日本全国そして世界各国から集った学生がそれぞれの目標に向かい、勉学や課外活動に打ち込んでいます。