体の動きを科学する「スポーツリハビリテーション」

体の動きを科学する「スポーツリハビリテーション」

けがの原因を突き止める

スポーツリハビリテーションの主な目的は、選手のけがの治療と予防です。けがの回復だけでなく、同じけがが再発しないよう原因を正確に突き止めることも大切です。例えば足の裏にある土踏まずは、人間が4足歩行から2足歩行に進化する過程でできた部位です。本来は弓なりの形をしていますが、いわゆる扁平足と呼ばれるような平らな形になっている人もいます。これまでの研究において、扁平足の人は運動中により大きなストレスが足に発生することがわかりました。この状態で足を酷使し続けると、足の裏のじん帯や足底腱膜の損傷、疲労骨折といった「使いすぎ症候群」につながるため、足の裏の筋肉を鍛えることが有効であるとされています。

三次元動作解析

近年の研究にはさまざまなテクノロジーも取り入れられています。例えば三次元動作解析装置は、赤外線だけを反射するマーカーを体に取り付けた人の動きを、十数台のカメラでいろいろな角度から撮影します。それぞれのマーカーがどの位置にあるのかという座標情報がコンピュータに送られ、これを解析することで、各関節が動いた角度や、そこにかかったストレスの強さも正確に算出することができます。例えばジャンプした後、膝がつま先よりも内側に入った状態で着地すると、まっすぐにそろえて着地するよりも膝に加わるストレスが大きくなり、けがにつながりやすい、といったことが科学的に証明できるようになりました。

動きを正確に「見る」こと

こうした機器類は、より高性能化かつコンパクト化が図られており、将来はスポーツの試合や練習の現場にも持ち込めるようになるでしょう。そうなれば実際の選手の動きをその場で測定し、よりダイレクトに指導やけがの予防に役立てられます。スポーツを支える医療職の中でも、医学や運動学といった専門知識をベースにしながら、最新のテクノロジーも導入して体の動きを正確に「見る」ことができる点こそ理学療法の大きな特徴であり、強みであるといえるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 理学療法学コース 講師 岡村 和典 先生

県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 理学療法学コース 講師 岡村 和典 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

理学療法学、スポーツ医科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私はスポーツリハビリテーションを専門にしていますが、時には脳卒中を患った方のリハビリに携わることもあります。一見、自分の専門分野とは遠いようですが、ここで脳の機能や運動との関わりを勉強したことが、後にスポーツの分野に役立つこともあります。
何かやりたいことがあるのはいいことですが、それだけをやればいいわけではありません。あなたも少し広い視野をもってやりたいことだけではなく、高校生の今やらなければならないことも同時に頑張りましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

県立広島大学に関心を持ったあなたは

県立広島大学は、教育、研究、地域貢献、国際交流のいずれにおいても公立大学として一級の大学になっています。「主体的に考え、行動し、地域社会で活躍できる実践力のある人材の育成」を目標に、教養教育では、大学4年間の学士課程教育を通じて実施する「全学共通教育科目」を設定するとともに、専門教育においては、教養教育との連携を図りながら、「専門科目」を系統的に設定することにより、バランスのとれた教育内容を提供していきます。